latest development の件、先に似たようなことを思われた方がいたらしい。(*1)

http://ameblo.jp/alarataihen/entry-11168469934.html
あらーら大変 ~MTGストーリー&ゲッターロボTV版などなど~ --【MTG公式翻訳】Multiverseを(プレインズ?)ウォークスルーしてみよう

この件は別記事についてだが、つまり今週分が特別ひどいということでもないのだろう。申し訳ないが、翻訳者の力量が足りていないことは明白に思える。
とはいうものの、はっきりさせておきたいのは、翻訳者を非難したいわけではないのだということだ。なんにせよ mtg-jp には編集者が居て、全ての原稿にとりあえず目を通して掲載している筈なのだ。記事が掲載すべき水準にあるかどうかもそこでチェックされるべきだろう。

だから、mtg-jp 的にはあれでいいと判断して掲載しているのだ、と考えるべきだ。
それに対して、あれは流石に駄目なんじゃないか、ということを伝えたいのが前回の記事の意図だ。訳の内容について言及したのは、あの翻訳をおれがまずいと思うのは個人的な好みや解釈の問題というレベルではなく、翻訳として成立していないのではないかということを示すためだ。(*2)

これがどう捉えられても構わないし、対応するもしないももちろん自由だ。mtg-jp にもおれのあずかり知らぬ事情が色々あるだろう。これ以上立ち入ることはできない。
上のリンク先の方は、mtg-jp 宛に(以前別の翻訳の件で)メールを出して改善を要求したことがあったそうだ。誠実な態度であると思う。メールを出すかはともかく、おれもツイッターでメンションを飛ばすぐらいはしておこうと思う。


(*1) もちろん2ちゃんねるのネットウォッチスレッドで知った。
(*2) その中に「おれならこう訳すのに」という自己顕示欲が入り込んでいることは否定しない。
ろくに和訳もしないでこんなことを言うのもなんだが、mtg-jp の latest development の訳は微妙なのではないか。今週の回を例にとってみよう。最後の少し手前の部分だ。

http://mtg-jp.com/reading/translated/ld/003061/
 今回の記事の中でこれまでに私は"戦略"や"環境"といった種の語をうんざりするほど書いた。そのハイライトは、私には、開発部における私たちのすべての種類の素晴らしく抽象的な性質の意思決定を毎日確認する必要がある。我々は世界の半分を漂う。我々は小さなシュレディンガーの猫、つまり、果てしない可能性が秘められている。そののち締切が来て、セットが完成し、それが世に出て、私はキッチンカウンターで、うおぉと叫びながらパックを開封する。これが真実だ。この時点では、すでに違うゲームだ。我々は何も変えられない。何もできない。

 プロツアーは我々に有意義に反応する機会を与えてくれる。

 もちろん、親切にも観念化され、丁寧に切り分けられたバージョンに私たちは反応する。それが最低限重要なことだ。

この辺りが何を言ってるか皆さんおわかりだろうか。おれには、わからぬ。

原文を引いてみよう。
Reading over the words I’ve just written, I’ve typed some variant on the words "strategy" and "environment" a nearly offensive number of times.
今回の記事の中でこれまでに私は"戦略"や"環境"といった種の語をうんざりするほど書いた。

この文はよい(「これまでに」以外はむしろ好い訳だと思う)。
That highlights, to me, the kind of wonderfully abstract nature of the decisions all of us in R&D have to make every day.
そのハイライトは、私には、開発部における私たちのすべての種類の素晴らしく抽象的な性質の意思決定を毎日確認する必要がある。

次の文はもう駄目だ。なにを言っているのだ。これを訳した人は、自分の書いた日本語の文を理解しているのだろうか?
highlights はどう見ても動詞だ。次に to me が来ているのだから、「おれにとっては、それは強調する」となる筈だ。なにを強調するのか。the kind of wonderfully abstract nature of the decisions だ。「驚くほど観念的な性質を持った決断の種類」。そしてその決断は「おれたち研究開発部の面々が毎日毎日下している」ものだ。
:そのこと、つまりこの文章に戦略だの環境だのって言葉が腐るほど使われてるって事実は、俺たち研究開発部の面々が毎日下しているなんとも抽象的な決断の数々が、実際にはどういうことに関わる決断なのかってことをはっきりさせてくれるように俺には思えるんだ。
ぐらいになるのではないか。
We drift between ephemeral half-worlds.
我々は世界の半分を漂う。

この文は大した意味を持たないが、half-worlds を世界の半分と訳すのは雑すぎる。「(複数の)半世界」だ。さらに言えば ephemeral が完全に脱落している。若干意訳してこんな感じだろう。
:俺たちはかりそめの不完全な世界の間を漂っている。
We’re little Schrodinger-kittens: perpetually potential.
我々は小さなシュレディンガーの猫、つまり、果てしない可能性が秘められている。

little は小さいではあるまい。kitten なのだ。
:俺たちはいささかシュレディンガーの猫的でもある。常に不確定な存在なのだ。
Then a deadline hits and a set’s finished and it’s out the door and suddenly I’m opening pack after pack on my kitchen counter saying, Wow: this is real.
そののち締切が来て、セットが完成し、それが世に出て、私はキッチンカウンターで、うおぉと叫びながらパックを開封する。これが真実だ。

ここは悪くない訳だと思う。が、real(原文では太字になっている!)は上の文の potential と対応しているのだから、対になる訳をするべきだ。
:しかし、ひとたび締切が訪れて、セットが完成して、開発部のドアを出て行くと、俺はいきなり台所のカウンターでパックを次々に剥きながら「うわお」とか叫んでいる。これは確定した現実だ。
At that point, it’s a different game. We can’t change anything. We can’t act.
この時点では、すでに違うゲームだ。我々は何も変えられない。何もできない。

この訳自体は問題ない。ただし、次の文との関連がある。
:ここまで来ると、違うゲームが始まっている。俺たちはもう何も変えられない。行動することはできない。
The Pro Tour provides us with the opportunity to meaningfully react.
プロツアーは我々に有意義に反応する機会を与えてくれる。

この訳も悪くない。しかし上の文の act を受けてこの文の react があることは拾いたい。原文ではわざわざ re の部分だけイタリックになっているのだ。
:プロツアーは俺たちに、行動の機会こそ与えてはくれないが、少なくとも意味のある対応をする機会を与えてくれる。
いささか冗長だかこのような訳でどうだろうか。(もちろん、act - react のように対になっているとわかる日本語の組み合わせが見つかれば最良だが、ちょっと考えつかなかった)
That’s the obligingly intellectual and cutely detached version, of course. It’s the least important.
もちろん、親切にも観念化され、丁寧に切り分けられたバージョンに私たちは反応する。それが最低限重要なことだ。

これは猛烈に難しい文で、訳者には同情するが、しかしこの訳はなにがなんだかわからない。version は解釈あるいは理解と捉えるべきで、
:とはいえもちろん、それはプロツアーの最も観念的な部分を切り取った一面に過ぎない。そんなのは大事なことじゃない。
とかなんとかなるのではないかと思う。(この訳は自分でもうまくできているとは思えない、が、少なくともおれなりの理解を表現したつもりだ。)


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ただで毎週最新コラムの訳が読める。有難いことだ。翻訳者はプレッシャーに晒されて、締切に追われて、おそらくは他に仕事を持ち、時には品質を諦めて納品速度を優先させたりしていることだろう。大変なことだと思う。その苦労の一端は想像できる心算だ。
しかしそれでも、最低限要求される水準というのはあると思う。和訳があるのに意味が解らないから原文に当たる、なんて自分でやっててもばかばかしいし(ついでに書くと何故原文へのリンクがないのか)、そんなことになる文章ってつまり最低限の水準を超えられていないのではないか。
もう一度書く。
これを訳した人は、自分の書いた日本語の文を理解しているのだろうか?
理解していてなお、あんな文になるのか。それとも、自分でも理解できない文章を納品しているのか。

対価を得ている時点でプロなのだから、頑張ってほしいと思う。
頑張ってくださいよ。

ザ・インタビューズ(さっき登録した)
http://theinterviews.jp/drk2718

ツイッター(以前からやってる)
http://twitter.com/#!/drk2718


ズヴィの記事後編はあとデッキひとつです。
英語名は Butcher’s Cleaver。だから肉屋の包丁なんだけど、これまで butcher は全部「解体者/解体する」って訳されてて、cleaver は一例しかないけど《オーガの裂断剣》(あと《二度裂き/Double Cleave》とかがある)。たった二語しかないのに両方既存訳語を避けざるを得なくなってしまってるのは凄い。イラストもどう見ても包丁だしフレイバーテキストまで包丁を示唆している。徹底した包丁っぷりだよ。

ところでこれまでのブッチャーさんたちを肉屋に置き換えてみるとどうなるかというと。

《オーグの肉屋/Butcher Orgg》
まあ普通に居そう。各人調達してそうな気もするけど。あと売ってる肉が臭そう。

《錆び剃刀の肉屋/Rustrazor Butcher》
無精髭伸びまくり。まあこれも普通に居るかな。

《くすぶる肉屋/Smoldering Butcher》
若い頃は羽振りがよかったことを想像させる。唯一の能力も「萎縮」。

《マラキールの肉屋/Butcher of Malakir》
吸血鬼肉喰わんだろ、という。

《顔なしの肉屋/Faceless Butcher》
なんかそういう怪談ありそうな気がしないでもない。

《真実の肉屋、コジレック/Kozilek, Butcher of Truth》
たぶん売ってる肉の単位がキログラム。

以上6枚と案外少ないのだった。顔なし(TOR)が一番古くて、オーグ(ONS)の後はずーっと使われてなくて錆び剃刀(SHM)以降ぽつぽつと居るって感じみたい。ちなみにこいつらに包丁持たせても誰ひとりとして絆魂がつきません。

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ちがうちがう、そんな話書きたいんじゃなかった。
Butcher’s Cleaver の訳としては「肉屋の包丁」はもっとも妥当なんだけど、それはそれとして、言葉の意味が「解体者の裂断剣」であることには変わりはない。だからこそこの名前がありなんだろう。ここから先は想像でしかないけれど、例えば英語で肉屋が meatsmith で包丁が kitchenblade だったとしたら、この装備品が Meatsmith’s Kitchenblade にはなってなかっただろうと思うのだ。なにかそういう齟齬みたいなものを考え始めると結構面白い。翻訳にはこういう面白さもある。
少し前にリブログされていたので追記的に書いておく。まあリブログされてる記事の元記事読む人は中々居ないし、まして別のエントリまで手が伸びることなんて殆ど皆無だろうけど、一応。
カイ・ブッディはインヴィテーショナルカードのことを「あんなのはくじびきみたいなもんだ」とディスっていた
http://drk2718.diarynote.jp/201107310131488291/

と書いたのだけど、これはあまり公平な物言いではなかった。元記事である PV のカイ・ブッディインタヴューから該当部分を訳してみる。

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http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-from-great-to-greatest/
PV’s Playhouse -- From Great to Greatest

――あなたのインヴィテイショナルカードについてはどんなご感想ですか。

勘弁してよ、あれは僕が作ったカードじゃないんだ。インヴィテイショナルなんて毎回みんなすごい莫迦強いカード提出して、それをウィザーズが適当にいじるだけなんだから。僕は《非凡な虚空魔道士/Voidmage Prodigy》のデザインには全く関わってないんだよ。僕が提出したのはこんなカードだった:
(青)
エンチャント
対戦相手は、手札を公開したままプレイする。
(青),[カード名]を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
(青)(青),[カード名]を生け贄に捧げる:呪文ひとつを対象とする。それを打ち消す。

クリス・ピキュラが出したのはこれ:
(1)(青)(青)
2/3
[カード名]が場に出たとき、カード名をひとつ指定する。
[カード名]を生け贄に捧げる:指定した名前の呪文ひとつを対象とする。それを打ち消す。

これが《翻弄する魔道士》になった。ぶっ壊れたカードが作られるか、キャンプファイヤーの焚き付けにしたくなるようなカードができるか、まるっきりくじ引きみたいなもんなんだよ。
でもプレイヤーにカードデザインさせるの、どうして止めちゃったんだろうね。だって提出されたカードとまるっきり関係ない、どのセットに入っても活躍できるようなものを作っちゃうぐらいなんだから、ウィザーズにとってはコストは文字通りゼロだよね。すごくいい企画だと思うんだけど。
世界選手権の優勝者か、プレイヤー・オヴ・ザ・イヤーの獲得者がカードをデザインするべきだと思うよ。そうすればそのふたつのタイトルにも箔がついて、プロツアーよりはっきり上になるし、誰にとってもわかりやすい憧れになるだろう。
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いかにトッププレイヤーと言えどもデザインについては素人なわけだし、実際ぶっ壊れたカードを提出する奴も多いんだから、ある程度修正が入るのは仕方がないことだと思う。だけど、例えば先日書いた《真面目な身代わり》のように適切なデザインをすればやっぱり使えるカードを刷ってもらえるし、《翻弄する魔道士》は確かに強かったけど強すぎるというほどでもなく、なにより根本的なアイデアのセンスがよかった。
カイ・ブッディのカード(《Wisedrafter’s Will》という名前だったと思う)がどうだったか、というのは今となっては判断が難しいけど、リアルタイムで見たときはいささか「ただ強」のカードだなあ、と思ったのを憶えている。当時の水準ではそのまま刷るわけにはいかなかっただろう。もちろん《非凡な虚空魔道士》が弱すぎたのは否めないし、イラストもひどかったのはウィザーズすら認めていることだ。「同情する」と書いたのは主にその辺りに対してだった。

最大の問題は《闇の腹心》だ。ボブ・マーハーの提出した原案は(よく知られているところだが)
Asp’s Grasp (緑)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは毒カウンターを9個得る。

こういうものだった。これはデザインセンスやパワーバランス以前のレベルで、当時毒カウンターは二度と使われることのないアイデアだと思われていたことも含めて、お話にならないデザインだし、なにより誠実さを欠いていると思う。つい張り切って強すぎるカード作っちゃった、とか、独創性がなくてどっかで見たようなつまらないカードになっちゃった、とかなら仕方がないと思うのだが、このデザインにはそういう弁解の余地すらない。
これに対して実際刷られたカードが全カード中でも最強に近い2マナクリーチャー《闇の腹心》だというのは、著しく不公平な話だと思う。上で引用したブッディの文でも、下から二段落目の「提出されたカードとまるっきり関係ない、どのセットに入っても活躍できるようなもの」は明言こそされていないがおそらくこのカードだろう。皮肉めかしてはいるが多分結構腹を立てている。この立腹についてはおれも全く同感だ。
カードのパワーレベルの調整が非常に難しいものであることは理解する。それでも、PV じゃないけど、いい原案はいいカードとして報われるべきだと思うし、ひどい原案にはそれなりのカードが刷られるようであってほしい。まあ、インヴィテイショナルカードどころかインヴィテイショナルも止めちゃった今となっては、あんまり意味のない議論ではあるけど。

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このインタヴューは結構面白かったのでそのうち全文訳してみたいと思っている。が、思っているだけで一文字たりとも始めてないので、もし例えばこれを読んで訳そうと思った人が居たら訳してもらえたらむしろ嬉しい。そして実際に訳されるのであれば一言コメント欄ででもお知らせいただけると大変有難い。もちろんこれは全く身勝手なお願いなので、守っていただく必要はかけらもない。

左のリンクにも入っているが、「あんちゃん」こと高橋優太氏が日本選手権で失格処分を受けていた。本人とは面識どころかネットでやりとりをしたこともないし、まあ完全に他人だ。とはいえ、強豪プレイヤーであることは疑いの余地がないし、公式サイトの週刊記事の連載も結構楽しみに読んでいたので、何が起きたのだろうとは思っていた。なにしろ公式の発表を見ても「投了が成立した後で双方が勝手にゲームを再開した」という説明がなされているだけで、まったく状況が想像できなかったからだ。
http://coverage.mtg-jp.com/jpnats11/article/001866/

それが、ブログという私的なフィールドではあるが万人から見られるところで本人からの声明があった。
http://69323.diarynote.jp/201108012219433686/
正直、少なくともなんらかの処分があるまではブログの更新はされないだろうと思っていたので驚いた。本人にとってはリスクばかりでメリットは殆どない行為だが、それでも説明しなければならないと感じたのだろう。その点に関しては正直感心しているし、誠実な態度であると思う。

しかし、状況の説明を読んで、なんというか戸惑ってしまった。「戦場の《森/Forest(NPH)》《山/Mountain(NPH)》を1枚ずつ取ってシャカシャカしはじめました。」なんだそれは? おれが対戦相手だったら首をかしげながらジャッジを呼ぶ。
手札の《森/Forest(NPH)》《山/Mountain(NPH)》をグニャグニャしはじめ、最後には握り潰していました。
この時点では投了の意思はなく考えている最中のつもりでした。
率直に言って、理解できない。トッププレイヤーって、そんなことするのか?

……いやまあトッププレイヤーだって人の子だ。へこむことも腹が立つこともあるだろう。カードに当たってしまうこともあるいはあるかも知れない。でも日本選手権という場でそういう行為に及ぶことがどのような影響を及ぼすか、想像するのは難しくあるまい。それに思いが至らないほど頭に血が上ってしまったのだろうが、それはそれでプレイヤーとして自己を律することができていないということだろう。

繰り返すが、おれは高橋氏の人となりを知らない。だから単純に、これほど強くてあれほど情熱を持ってコンスタントにコラムを書ける人材がマジックから去るとしたら、それはマジック界にとって損失であろうな、と思う。本人はマジックを辞める心算はないという。これからについて、「改善する」としか言えない、と記しているが、それは多分正しい。もはやどれほど言葉を重ねても意味はなく、ただどう振る舞うかだけが問題になるからだ。その振る舞いはこれまでよりはるかに厳しい目で見られることだろう。それでもマジックにしがみつこうというのであればそれはそれで尊重されるべき決断だろうとおれは思う。

Peter Szigeti みたいな最期を、どうか迎えませんように。

追記(2016-10-23):
少し遅くなってしまったが書いておく。ここで Peter Szigeti(以下 PTR)を挙げたのは、単に lifetime ban を受けているプレイヤーなら誰でもよかった――のだが、しかしあえて PTR を選んだのは、悪意があると取られても仕方がないし、実際多少の悪意があったことも否定はできない。ただ、これを書いていた時点では PTR が死んでいたなどとは思いもよらなかった。タイミングも微妙で(まさにこの年のこの8月に亡くなったそうだから)知りようもなかったわけだが、さすがに知っていれば PTR を挙げることはなかっただろうと思う。

さて、高橋優太氏はこの後もマジックを続け、とうとうプロツアー「異界月」でトップ8に入賞するに至った。繰り返すが、おれは高橋氏とまったく接点がないし、この事件の後ゲーム中の振る舞いがどう変わったかなどということもいっさい知らない。それでも、これを乗り越えてプロツアートップ8というところまでたどり着いたということはまったく祝福すべきだと思う。おめでとうございます。高橋氏のこの時の決断と覚悟は、5年の歳月を経て、とにかくひとつの実を結んだ。それはなかなか誰にでも成し遂げられるようなことではないと思うのだ。

翻訳について

2011年7月21日 TCG全般
サブタイトル大きく出てみましたけど単なる生存報告です。M12 のプレリリースは 1-1-2 という極めてコメントしづらい成績だった上に時期を外したのでレポートはやめときます。あ、本家には書いたのでどうしても読みたい人はそちらをどうぞ。

閑話休題。

ペンティーノさんが面白いことを書いていたので、今更ながらちょっと反応してみる。元記事は
七転八倒MTGONLINE -- 雑記0709
http://biggbo.diarynote.jp/201107092127068536/
なのでまずそちらを読んで欲しい。翻訳に少しでも興味がある人(そしてこの文章に目を通す暇がある人)なら必ず読むべき記事である。
特に面白かったのは、言語を置き換えることによって伝えるべき意図から文章が離れてしまうことを分度器で喩えた以下の部分だ。
5度刻みの分度器と7度刻みの分度器があったとして26度を読むとして。ここでまず7度刻みの分度器で測る→その値を直近の5度刻みに置き換えるという操作をしたとすると、26を28と読んで28と直近の30と読んでしまう。最初から5度刻みで測ればより25度として測れたのに。

コメント欄ではベン図という言葉を使っている人が居て、そちらの方が起きている現象としてはより正確な喩えだ。ついでに言えば言語学的にはシニフィエとかシニフィアンとかいう概念に関係がある話で多分基本的なことではある。でもこの分度器の喩えは実にいいと思った。人によってはぴんと来ないかも知れないけど。

個人的に一番ひっかかったのはその下の部分。
人が頭で考えているのは刻み幅とかなにもないアナログな絵。言葉は床の上に敷き詰められているタイル。そのアナログな絵に近いものを、50×100のタイルの境界線に沿って書きなおす、その作業が文章にするということで、

実は、おれには全くそんな風に思えない。自分が頭で何かを考えるときは、常に言語の介在を必要とするからだ。思考というのは「まだ見ぬ文章を黙読する」感じに一番近い。つまり、思考の時点で既に 50×100 のタイルが敷き詰められている。言語が文章のあり方を規定するというよりは、言語は思考のあり方を規定しているようにおれには思える。でも、これは極めて個人的な感覚に拠っている洞察だ。もしかするとたとえばペンティーノさんは、アナログな絵のように思考をしているのかも知れない。

そんなことも含めて、面白い文章でした。
re-giant 氏の日記、ちょくちょく更新を見逃すので何故だろうと思っていたのだが、左の柱で正しい位置にあらわれないのですね。で、アラビア湾の見える辺りにお住まいらしいのでタイムゾーン周りの処理がおかしいのかなと勝手に納得していたのだが、下手すると数週間分ずれてたりするのでどうもそれだけだと説明がつかない。もしかするとアラビア湾とか全然隠れ蓑で、本当にお住まいの辺りはフェイジングしたりタイムシフトしたりプレナーがカオスってたりするのかも知れない。多分そんなことはない。
昔デュエリスト・ジャパンで翻訳されていたズヴィの連載記事で、実戦の一場面を取りあげてそこでの最良の手を考察する、という内容のがあったんだけど、情けないことにタイトルが思い出せない。
憶えているのは PTNY00? のサイドイヴェントのチーム・チャレンジ決勝戦、Antarctica 対 Black Ops の一戦で、アントワン・ルーエルがジョン・フィンケルを負かし、スティーヴン・オマホニー=シュワルツがオリヴィエ・ルーエルに勝って、勝敗がかかったフローレン・ジュードン対ダニエル・オマホニー=シュワルツの3本目。3マナで土地が止まっていたジュードンが待望の4マナ目を引き当てるが、クリーチャー数は1対4、相手の手札は3枚、ライフはお互い 10 という厳しい状況。手札にはエンドカード《陥穽》があるが、到底致死ダメージをたたき出せる戦線ではない。さてジュードンの一手は? みたいな回。解答も含めて凄く好きで、何度も何度も読んだので未だにこんな風に憶えている。
他の回で印象に残っているのは青単パーミッションが何故かマスティコアで緑単ストンピィを攻め立ててて、4マナ立ってて場には寝てるモノリスがあるけどさて手札の《退去の印章》をプレイする?って回と、ネクロ・ドネイトでカンスリに押されまくってて《Illusions of Grandeur》も出してるのに既にライフは 13 とかしかなくてブロッカーは《ファイレクシアの抹殺者》1体、さあ相手のフルアタックが来たけどどうしよう、って回。
タイトルと、それぞれデュエリスト・ジャパンの何号に載っていたか、わかる方がいらしたら教えてください。

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すごくどうでもいいトリビア:フローレン・ジュードンは 2001 年の Netrunner フランスチャンピオン(ただし DCI のサポートから外れたあとなので非公式)。
「狂喜」は原語だと Bloodthirst なんだけど、訳として「狂喜」は微妙な気がする。というか、正直よくない。意味としてはかろうじて間違ってない感じだが、Bloodthirst という言葉の持つフレーバーは殆ど全く残っていない。せめて「血」か「渇」かどちらかは入れたいところだ。おれが訳すとしたら「血望」とかにすると思う。あれ、字にしてみるといまいちだな。翻訳は難しい。

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《外科的摘出》、折角ボックスポロモになったのはいいけど、どう考えても通常版の方がかっこよくないかい?
通常版→http://magiccards.info/nph/en/74.html
プロモ版→http://magiccards.info/mbp/en/53.html
なんかこういうのげんなりするよね。まあ、プロモのほうがかっこよかったりするとそれはそれで入手困難になって大変、みたいなのもあるんだけど、それはおれにとってマイナスでもマジック全体にとっては多分プラスだからよかろう、と思えるところだ。
MOが普及し始めた頃から、MOは事故りやすいみたいな話は時々目にした。それがどうも気にかかってしょうがなかった。まったく個人的な感覚なのだが、「無作為がたまたま自分に不利に働いたことについてあたかもそれがなんらかの作為であるかのように愚痴る行為」というのがおれはかなり嫌いなのだ。

コンピュータで完全な乱数を作り出すのが難しいことは知っている。が、たかだかデックのシャッフルぐらいであれば偏りが無視できるレベルの無作為化は可能だろうし、ましてそれが「事故りやすい方に偏っている」ものであると考える合理的な理由はひとつもない。にもかかわらず、MOが事故りやすいという話は時々目にした。とすると、考えられることは、「リアルの方が事故りにくい」のではないかということだ。

http://togetter.com/li/146223

最近関連するツイートがあったのでまとめてみた。@himamu523 氏が実にさらりと「むしろ人間が『均等になるよう作為的にシャッフルしちゃう』」と書いているが、多分そういうことなのだ。長引いたゲームが終わって次に入るとき、場に出てたたくさんの土地を、あるいは墓地にどっちゃり溜まった呪文を、なんとなくばらけるようにする人は多いんじゃないだろうか。完全な無作為っていうのはそういうカードの明らかな偏りも排除しない。その差が体感的なレベルにまで達するかどうかはわからないが、影響があることは否めないと思う。

まあMOやったことないんですけどね。
ブライアン・キブラーが「《四肢切断》使えば使うほどこのカード刷られるべきじゃなかったって思うわ」(*1)とかツイートしてる。まあそうかもねー。使ったことないけど。「色の組み合わせの弱さ(多分「除去のない色の組み合わせ」とか「多色そのもののデメリット」みたいなことだと思う)を根本的に変えてしまう」(*2)とも言っている。単にカードパワーの問題ではなく、マジックの根幹に関わってくるあやまちだ、ということだろう。
(*1) http://twitter.com/#!/bmkibler/status/77544406785331200
(*2) http://twitter.com/#!/bmkibler/status/77537719160549376

これはφマナのスペル全部に言えることではあって、今回は全色だから、プレナーカオスの時よりより大胆かつ広範囲に影響を及ぼすアイデアだ。だからφマナの呪文は注意深くカードパワーが抑えられているし、もしかすると汎用性の高いカードを意図的にアンコモンにとどめているのかも知れないとすら思う(でも《四肢切断》も《精神的つまづき》も能力的にはアンコモンが適正なので多分これは考え過ぎ)。いずれにしても刷られてしまった以上はスタンダードに最低一年以上は留まるわけで、どこまで《四肢切断》がオフカラーで使われるかというのにはちょっと興味がある。流石に禁止されたりはしないと思うのだが。

φマナのカードで個人的に面白いと思ったのは《ノーンの別館》。この手のプロパガンダ系で色マナを要求するデザインはあり得ないけど、φマナならそれができるというのはエレガントだと思った。しかし、コントロールデッキが相手のライフを多少削っても嬉しくないし、ビートダウンデッキはこんなもの出してる暇はないし、根本的に噛み合ってないカードではある。
好みで言えば《憤怒の抽出機》が大変好きである。しかし、完全に直線的なシナジーのカードで、決して追加部品がリリースされることもないから、ものすごく閉じてしまっているデザインだ。まあ、リミテッド向けのカードということなのだろう。
Taku 氏の日記より。

http://misdirection.diarynote.jp/201106012327252610/
レアトークン
16枚目のおまけとして、トークン、ルールカード、販促なんかが入ってますよね。そう、ドラフト時に真っ先に外されるあれです。トークンにレアリティってないはずですけど、体感的に出にくいトークンってありますよね。

ROE のタクタクトークンがレア、みたいな話辺りからその手の話は聞いていたが、正確なところは知らなかった。と思っていたら流石 diarynote、そういうことを調べている方もちゃんといらっしゃる。

以下、モノクロ氏の日記へのリンク。

http://71757.diarynote.jp/201105220008177334/
NPH誰もが集めていないカードの件
http://71757.diarynote.jp/201102062302502689/
MdB(でしょうかね略) 誰もが集めていないカードの件
http://71757.diarynote.jp/201010200017352805/
SoM 誰もが集めていないカードの件
http://71757.diarynote.jp/201007261910428486/
M11 誰もが集めていないカードの件
http://71757.diarynote.jp/201002142328021692/
WWKコンプ
http://71757.diarynote.jp/200910180010266261/
Zendikar やっとコンプ

ROE については残念ながら記事を見つけられなかったが、とりあえず現スタンダードの分だけリンクしてみた。それ以前から調べていらっしゃるようなので、興味のある方はログを遡ってみるとよろしいかと。ただ、diarynote ってとにかくログがくそ参照しづらいのでこういう時はしんどい。

見てみると面白いのは日本語と英語でだいぶ種類数がちがうことで、基本的には英語版のほうが種類が多いようだ。レアリティは概ね比例しているが、一番少ないのは大概1種類しかないようなので、相対的には日本語版のほうが出やすいことになる。

NPH についてはゴブリンが1種類しかなくて一番レアらしい。昨日 NPH の発売日に記念の心算で買ったまま忘れていた1パックをやっと開けたのだが、その中にゴブリン・トークンが入っていた。レアは《シルヴォクののけ者、メリーラ》とかであまり心躍る感じではなかったが、トークンとはいえ珍しいものを引けるとやっぱりちょっと嬉しいものだ。基本土地もファイレクシア沼だったしね。
NPH を買おうかどうか少し迷っていたのだけど、一箱買ってもアンコモンが4枚揃うとは限らないことと、神話レアで欲しいのがまあ赤白剣ぐらいということ、そして自分の引きの弱さ、などを総合的に勘案して今回も箱を買うのは止めておくことにした。
しかしコモンとアンコモンは買っておかないとあとあと面倒なので、いろいろ考慮した上で CFB でコモンアンコモン4枚セットを買うことにした。ついでにシングルもちょっと買おうか、と考えたところで、目に入ったのが例の新たなるファイレクシアのイベントデッキ。あ、これ一緒に買ったらいいんじゃね?

……ってそんなことできるわけないですよね。一瞬まじでナイスアイデアとか思ってしまった。
http://www.cardkingdom.com/static/support
Due to Wizards of the Coast regulations we can not ship any factory sealed products outside of the Unites States, Puerto Rico, and APO/FPO addresses. This includes booster boxes, booster packs, theme decks, tournament decks, 2 player starters, fat packs, or variety packs.

引用元は Card Kingdom だけど、もちろんどの店でも扱いは同じだ。ざっくり言えば、「カードが入ってる未開封の製品」は国外に発送できません、ってことになるかな。まあ、曖昧だったというか今まで調べたことなかったことをある程度はっきりさせられたからよかった、ということにしておこう。

シングルは一部のトップレア以外は日本より2〜3割安いという印象で、ある程度まとまった数を注文するならやはり魅力的だ。特に急いではいないので、少しじっくり買い物を選んでみたいと思う。
彌永淳也氏のツイートより。
http://twitter.com/#!/junyaiyanaga/status/73216573279703040
自分でも運だとはいいたくないが、環境理解度が高い状態で大会に望むことができるかできないかということには、運の要素がとても高い部分だと考えている。


この前後一連のツイートは実に面白いので一読の価値あり。

http://twitter.com/#!/junyaiyanaga/status/73215134373380096
http://twitter.com/#!/junyaiyanaga/status/73216573279703040
http://twitter.com/#!/junyaiyanaga/status/73218978671108096
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「強いプレイヤー同士で争うプレミア・イベントでは、環境を正確に把握しているほうがおおむね勝つ」ということは多くの人が同意することだろうと思うのだけど、その把握のためにはプレイテストを繰り返して行うしかないのだ、というのが一般的な認識だろう。結果を残したプレイヤーのデッキは大抵「環境を読み切った」と書かれるが、では何故そのプレイヤーは環境を読み切れたのか?というところまで踏み込んだ洞察は見たことがなかったので新鮮だった。彌永氏は「この点(※環境を正しく理解できるかどうか)はドローの差よりも自分は運の要素が高いと考えている。また、大会結果に対する影響もドロー差よりかなり大きいと感じている。」と書いている。こういう文脈で「マジックは運ゲー」と捉える見方はこれまであまりなかったように思う。
たぶん CFB みたいにコンスタントに実績を残すチームは、その「運ゲー」をある程度克服することができているのだろう。しかしそれは非凡な奴らがたっぷり時間をかけてやっと残している結果なのだから、世界中の殆どの人には真似ができない。それを「簡単に乗り越えられる方法は思いつかないしたぶんない。」と彌永氏は書く。その一文にはある種の諦念すら感じられるが、それを正面から見据えて乗り越えようとする姿勢には大げさに言えばちょっと感動したし、結果が伴って欲しいと感じた。おれごときがこんなところで何を言っても祈っても、なんにもならないわけだが。
参加者 26 名の5回戦。賞品は今回は4位(12p)までで、典型的な狭く厚く形式だった。

引いたレア:
《ファイレクシアの変形者》
《心理的手術》
《金屑の悪鬼》
《先駆のゴーレム》
《金属海の沿岸》
《痛ましい苦境》

ははは残念。一応変形者は弱い筈はなく、先駆のゴーレムははまれば素早く勝てる、かも知れない。しかしコモン・アンコモンも除去が乏しくてひたすら微妙。緑黒タッチ白で組んでみた。

R1 黒青
G1 ダブルマリガンだったけど相手の回りも芳しくなく逆転勝ち。
G2 序盤押されて、ライフ 12 まで減らされながら《先駆のゴーレム》に辿り着き、よっしゃまくったと思ったら《肉体アレルギー》が飛んできて 12 点ぴったり失って負け。
G3 4ターン目に《納墓の総督》で手札見たらスキジリクスが居た。ダメージレースを挑むも1ターン及ばず負け。
→○×× 0-1

R2 赤白
G1 相手の土地が止まったのにつけこんで殴り、《吠える絡みワーム》の威嚇で勝ち。
G2 相手の引きがあまりよくなく、終始攻勢で勝ち。
終わってから何故かレガシーのデッキについてしゃべったりした。ものすごく素人臭い質問に丁寧に応えていただいて有難うございました。
→○○ 1-1

R3 黒白
G1 《太陽の槍のシカール》に《調和者隊の盾》を装備されたら、文字通り死ぬまで対処できずに負け。
G2 おたがい《調和者隊の盾》を装備しあってにらみ合う不毛な展開だったが、《腐食獣》が均衡を崩してくれる。終盤相手に《ファイレクシアの抹消者》が出てきて驚くが、無視して空から殴って勝ち。
G3 相手5ターン目にまさかの《ファイレクシアの抹消者》。こちらは返しに《ファイレクシアの変形者》を出して対抗。予定調和的に相打ちになり土地だけになった場から引き勝負。かなり攻め込むが除去をタイミングよく引かれ、最後の最後1点/1ターン足りなくて時間切れ。
3ゲーム目はめちゃめちゃ面白かった!
→×○△ 1-1-1

R4 黒赤白
G1 相手の土地が詰まり、《磁器の軍団兵》で何ターンか殴ってから盤面まくられそうなところで《腐食獣》がタップアウトの相手に 11/3 で突っ込んで勝ち。
G2 今度は相手が土地溢れ気味で、終始盤面の優位を維持して勝ち。
→○○ 2-1-1

R5 赤白
G1 ダブルマリガン。早々と《刻まれた勇者》が出てきて、《グレムリン地雷》をぶつけるが《使徒の祝福》でかわされてしまい実質勝負あり。最後は勇者に装備品が4つぐらいついて殴り殺される。
G2 土地3枚で始めたら3枚で止まる。また早々と《刻まれた勇者》降臨したが今度はちゃんと《グレムリン地雷》を当てる。しかし《先駆のゴーレム》が続いてきて GG 。
→×× 2-2-1

というわけで全く養分としか言いようのない成績だったが、大変楽しかった。次のプレリリースは M12 で7月らしいが(勝手に8月だと思ってた)、もろもろが許せば参加したい。
どひートンドル。しかもこんな時に限って手元のテキストファイルも消しちゃったぜ。でもグーグル先生がキャッシュ持っててくれたのでそこから復活。グーグル先生ありがとう!

あと何も考えずにサブタイトルつけちゃったけど、以下の文章は《弱体化》とは何の関係もない。

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Daily MTG -- May 2011 Update Bulletin -- Functional Oracle Change
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/feature/141a&page=2
より、冬の宝珠部分だけ抄訳
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《冬の宝珠/Winter Orb》
最初の最初のマジックのルールでは、アーティファクトが持っている常在型能力はそのアーティファクトがタップされると「オフ」になり、つまり一時的に能力を失った。
このルールが変更されたとき、3枚のカード(すなわち《冬の宝珠》《静態の宝珠》《吠えたける鉱山》)に対して、この「オフになる」機能を残すためのエラッタが出された。その後《静態の宝珠》と《吠えたける鉱山》についてはエラッタが反映された再版がされたが、《冬の宝珠》についてはその機会がなかった。もし現在のマジックのルールしか知らないプレイヤーがどこかでこのカードを拾ったとしたら、そのプレイヤーにはこのカードが機能するためにはアンタップ状態であることが必要だとは想像もつかないだろう。かつては当たり前だった「エンド前に《冬の宝珠》をタップして自分だけ土地をアンタップする」なんてプレイングを見ても、ただただ戸惑うばかりだろう。まあ、そんな状態は容認できないってことだ。
新オラクル
プレイヤーは自分のアンタップ・ステップの間に1枚より多く土地をアンタップすることができない。
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というわけで、まさかの機能変更である。今手持ちの中で一番気に入ってるデッキに《冬の宝珠》が入っているのでこの変更は他人事ではない。というか今日日冬の宝珠なんて使ってる奴はそうはおるまい。半ばこのために入っていた《火+氷》もおかげでなんだか微妙な感じになってしまった。
変更自体は受け容れる他ないが、正直理由には釈然としないところがあり、特に他の2枚の経緯と比較すると何故こうされるのか首をひねるところはある。再版禁止カードであるとかならともかく、冬の宝珠は単に再版されてないだけなのだ。思い直して元に戻してくれるといいのだが。
※効果が完全に相称的なカードだから厳密に言や弱体化じゃないんだけど、まあ相手にタップされることあんまないよね。
※新オラクルの発効は5月5日(タイムゾーンは知らん)
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(以下、re-giant 氏にいただいたコメントに対する返事の内容をうろ憶えかついくらか修正しながら追記。いただいたコメントは 「これだとプレミアムセットでもなんでも一度でも再版されていれば修正はなかったように読めるが、再版されていてもされていなくても『今のルールしか知らないプレイヤーが手に取った時の反応』は変わらないのでは?」というような内容だったと記憶しています)
→ですよね。そしてそれは他の2枚についても同じことだと思う。
→近年のオラクルの方針は「カードが印刷された当初に意図された挙動に近づくようにテキストを修正する」となっていると思う。この挙動の中に「当時のルール」までをも含めるかどうかは考え方の問題で、それはどちらに決めてもいいと思うのだけど、しかし決定には一貫性があるべきではないか。つまり、ルールも含めるとするのなら今の通り「アンタップ状態である限り」という一節を残すべきだし、ルールは含めないのだと定めるのなら他の2枚についても「アンタップ状態である限り」は外すべきだ。再版されているかされていないかでそこが違ってくるのはおかしい。
(あきらかに一昨日はこんなこと書いてませんでしたが、まあ言いたいことはこういうことでした。)

生存報告

2011年5月2日 TCG全般
というかまあ本家は普通に更新してるので単にねた切れというところですが。

フルスポイラーが結構早く出た。このところはかなり情報統制が上手く行っていた印象だが、今回は例の日本語版大量流出を皮切りにだだ漏れという感じだった。全く勝手な印象だけで言うと新たな情報提供者が出現したのではないかと思うがもちろん根拠はない。多分だけど、今回に限らず組織的な漏洩というのは殆ど無くて、むしろ情報に触れられる立場の個人が魔が差してやっちゃう、みたいなパターンが多いのではないだろうか。そうであれば完全に防ぎ続けるのは難しい。いたちごっこは続く、というところだろう。

しかし、いつもは早く見たい早く見たいと思っているけど、あんまり早く出るとやっぱり確実に興醒めする。難しいものだ。ここ何作かのエクスパンションはウィザーズの意図にかなり近いタイミングで情報が流れていたのだと推測できるが、個人的にはあれだといささか遅すぎる気はするのだよね。その間のどこかに正解があるのかな、と思うのだが。

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とまあ、こんなことを5日ぐらい前に書いて上げてなかったのだけど、流出の顛末を聞いてまあそんなもんだろうなあ、と。プロはそれこそ生活かかってるわけだから迂闊にもほどがあるが、直接やらかしたのは 19 歳のプレイヤーだとかで、それもさもありなん。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtg/eventcoverage/main
Event Coverage Archive : Event Coverage : Daily MTG : Magic: The Gathering

イベントカバレッジへのリンク集を見ていると、随分プレミアイベントも減ったものだなと感じる。数えてみるとグランプリは微減、プロツアーは最大7だったのが現在4(世界選手権を含む)、そしてマスターズは影も形もなくなった。今のシステムしか知らない人がマスターズの賞金体系見たらたぶんひっくり返るだろう。
ある時期まで、ウィザーズ社はマジックをほんとにポーカーにしたかったんだと思う。レーティングシステム、プレミアイベント、マスターズ。クイーン・メリー号でプロツアーを開催し、インヴィテーショナルは世界各地を巡り、ひと握りながらトッププロはガチでマジックだけで喰っていけた。
だけど、きっと、その派手さに見合うほど売り上げ/収入を伸ばすことはできなかったんだろう。
マジックとポーカーは、たぶんどっちが面白いとか決められないぐらいどっちも面白い。でも、ポーカーには歴史があって、ポーカーはトランプひと組あれば遊べて、ポーカープレイヤーはかっこいい。マジックプレイヤーはオタクっぽくて、マジックやるには山ほどカード買わなくちゃいけなくて、マジックは 1990 年代に生まれたばっかりだ。勝負は見えていたとも言える。
ウィザーズ社は、徐々にイベントにかけるお金を減らしていった。ひとつひとつ、理由をつけて、でも着実に。マスターズを廃止して、その分の賞金の一部はプロツアーに上乗せすると言いながら、今度はそのプロツアーを減らしていく。ジグザグフォーマットを導入することで、フォーマットごとに行われていたプロツアーを統合する。シドニーや南アフリカで行われてたインヴィテーショナルは E3 の会場で行うようになって、ついには廃止される。
そこまで売り上げが落ちてるわけじゃない、んだと思う。どちらかといえば、ようやく適正な賞金規模にまでダウンサイジングできた、というところなのだろう。それでもグランプリの参加人数はむしろ増えているぐらいなのだから、それなりにヘルシーな状況と言えるんじゃないだろうか。
昨日ペンティーノさんのところでズヴィが PTニース2002 で着てたTシャツの話をしたついでに自分が昔訳した記事を紹介したんだけど、あれはサイドボードスレッドが初出なので本来は Braingeyser に収められている筈なのだった。しかし isweb ライトの終了(ひどい話だ)で Braingeyser はあわれ電子の藻屑と化し、有志の方が復帰を進めてくれているもののまだまだ復旧できていない記事も多い。
http://www16.atwiki.jp/braingeyser/
Scar of Braingeyser
しかし幸か不幸か、Braingeyser はブログではなかったこともあって、Internet Archive にほぼ完全にクロールされている。おそらく全ての記事が残っているのではないだろうか。
http://replay.waybackmachine.org/20071222031255/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/
Internet Archive: Braingeyser -- Top Page (2007-12-22)
ただ残念なことに CSS が拾われておらず、微妙に読みづらい。というわけで、自分が訳したものについては昔のサイトのページをそのまま上げ直してみた(コメントする2分前ぐらいだったので、ペンティーノさんが知らないのも無理はない)。メールアドレスが古いままだったりするがそのような事情なので了承されたし。
http://homepage3.nifty.com/drk2718/tidal.html
黄昏通信社跡地処分推進室跡地処分推進室:高潮の翻訳者
CSS のない状態でアーカイヴを見るよりはいくらか読みやすいかと思う。今となっては古くなってしまった記事も多いが、どうか楽しんで欲しい。

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