【蔵出し翻訳】アラビアン・ナイト リミテッド・レヴュー:白
2019年6月11日コメント (2)これはアラビアン・ナイトのリミテッド向けカード分析の第一回だ。
■白
おれ(*1)はこれまで何年もこの手のレヴューを書いてきたが、単色デッキを組むことを勧めたことは一度もなかった。だが、ついにその日が来たようだ。カード・プールと環境を考えると、アラビアン・ナイトの白は単独でこそ最大の力を発揮する。他の色と組むことは速度を鈍らせるだけだ。
白ウィニーは結構な確率で5ターン・キルを決められる。《Army of Allah》や《Jihad》、そして1~2マナのクリーチャー数体、という編成でだ。もし相手がこの猛攻撃に耐えられても、今度はバンドの悪夢が襲って来て、まあ大抵の場合は屈服することになっちまうだろう。
パックには8枚しかカードが入ってないから、ヘイト・ドラフトなんてしてる暇はないってことは頭に入れといた方がいい。もし、アラビアン・ナイトだけでドラフトする心算だったら、公平な条件を作るためには6パックは必要だろう。つまりひとり頭1000ドルかかる計算になるが、ほんとにこのゲームが好きだったら問題にならない額の筈だ。
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(*1) おれ
この記事の著者は Gary Wise ということになっている。なにせ掲載されていたサイトが Misetings だったので当時はそこもねただろうと信じて疑わなかったのだが、今考えてみると普通に本人が書いてた可能性もあるな。
Gary Wise は当時のプロプレイヤーで、公式サイトで長くリミテッド用のカードレビュー記事を連載していた。超一流には届かなかったプレイヤー、という印象はあるがコミュニティへの貢献度は高い。のちにポーカーに転じたが、そちらでも解説記事のライターをしていたようだ。
Misetings は今は亡きマジックのジョークサイト。
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■カード
このちびすけはたしかに邪魔くさい時もあるにはある。が、ぶっちゃけた話、0/1 ってのはなんぼなんでも死にやす過ぎ。もし《Army of Allah》を山ほど持ってるとか、相手が《Juzam Djinn》を山ほど持ってるとか言うんだったら、メインに入るか、あるいはサイド・インの可能性もなくはないが、リミテットで重要な能力はダメージを与えること、だよな。5手目から7手目。
白に《踏み荒らし》があるってのはどうよ? 3マナあれば、ちっぽけな兵士たちが立ちはだかる奴らをばったばったとなぎ倒す破滅の大軍に変身する。6パックのアラビアン・ナイトのドラフトでは、こいつが白ウィニーを組む理由になる。早い順目から、きっちり、いっぱい取ろう。2手目から4手目だ。
冗談だと思うかも知れんが、単なる事実として、《砂漠/Desert(TSB)》は白ウィニーにとって一番やばいカードなんだ。《Camel》は攻撃では役に立たんだろうが(《Army of Allah》を2枚使うってんなら別だけどな……)、他の連中が環境中もっとも鬱陶しい土地に引っ掛かっちまうことを考えれば、こいつは悪くない。バンドってのはドードー鳥と同時期に死に絶えちまった能力だから、馴染みのない人も居るだろうし、ややこしいルールだが、慣れればなかなか素敵だってことがわかると思うぜ。5手目から7手目。
*cf. ご参考までに
こいつあいけてねえ。もしこっちが選んだ対象へのダメージを置換できるんだったらすげえんだが、残念ながらそうじゃないんで、リミテッドじゃ役に立つ場面がない。サイドボードにしまっとこう。7手目か8手目。
このセットで2番目に好い白のカード。なんたって《Army of Allah》と同じことをやってのけて、あげくに場に留まるんだ。もちろん白のトリプル・シンボルは問題だが、最初に言ったようにこの環境では白単はむしろあり。だからこいつを見たらがっちりキープして、目に入る白いクリーチャーを片っぱしからドラフトしよう。初手から3手目。
さて、ナンバーワンのおでましだ。ぱっと見はただの紙だが、この環境ではこいつはまじでやってくれる。《ジャザム・ジン/Juzam Djinn》、《アーナム・ジン/Erhnam Djinn(JUD)》、《セレンディブのイフリート/Serendib Efreet》、……この小男は、奴ら全部をひざまずかせて、公平な裁きを下してくれる。散らしで入れられることも考えると、セット全体でも最強クラスのカードだろう。3ターン目に砂漠に突っ込んだりしないように。初手取り。
4マナあればこの環境ではもっと凄いもんが手に入るんだが、こと白いクリーチャーとなるとこいつが最強。《ウォー・エレファント》とバンドを組んで、あらゆるものを踏みつぶす。レアの“爆弾”カードより高見をすべきじゃないが、クリーチャーが少ない時には《Army of Allah》より優先して取るべき場合もある。初手ないし3手目に。
キュートなトリックだが、攻めて攻めて攻めまくりたいこの環境で、こいつはあまりにも防御的すぎる。もちろん、これより悪いカードはいくらもあるんで、デッキに入らないとは言わないが、それでもできればサイドボードに置いときたいと思うだろう。5手目から7手目。
『乞食はもらいを選べない』なんてことわざがあるが、白使いはその乞食だ。とにかくこの環境で白を使うんなら、血の通った肉体を持ってる奴は全部ピックして、《Army》や《Jihad》しなきゃいけない。ここでおれの言う「血の通った肉体」ってのは、パワーが1以上あるってことだ。つまり、こいつはデッキに入る。赤魔道士と当たることを祈ろう。そいつが《Ali》を持ってないことも祈ろう。3手目から5手目ってとこ。
*cf. 《アリ・ババ》のわけないのでたぶんこいつだと思われます。
#《崇拝》の先祖がクリーチャーだったとは……。
おれはこのカードは大好きだが、まあ全くリミテッド向きじゃないわな。『シエラザード』は素晴らしい物語で、いっぺん読むことを勧めるが、このカードにまつわる物語となるとまあ対戦相手の時間を無駄遣いさせたあげくにあらゆる試合に引き分ける、ってのがせいぜいだろう。自分んちの地下室でならともかく、公認大会で使っちゃいかん。8手目。
わお、こいつはいいぜ。象とCavalryがバンドしてもう一頭象がバンドしてもう一隊Cavalryがバンドして 8/8 トランプルにもなりゃ戦闘じゃ死にっこない(*2)。たしかにこいつは4マナ 2/2 だが、白いデッキをまとめあげるかすがいみたいなクリーチャーなんだ。一度使ってみれば、おれの言わんとすることがわかると思う。2手目から4手目。
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(*2)象とCavalryがバンドして……死にっこない
これはそもそもできないし(攻撃時にバンドを組む際にバンドを持ってなくていいのは一体だけ)、8/8 という数字も合っていない。
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原文 Gary Wise / Arabian Nights Limited Review: White
http://misetings.com/article/427(リンク切れ)
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re-giant さんがこんな記事↓を上げていたので、昔訳した記事を引っ張り出してきた。
【翻訳】マジックの世界に変化をもたらした千夜一夜/It happened one nights【DailyMTG】
https://regiant.diarynote.jp/201906092347189528/
訳したのは 2002 年 5 月とからしいのでひと昔どころじゃない昔だった。やんなっちゃう。というわけで訳はほぼまったく直していない。「cf.」と「#」のくだりは当時つけた注で、(*1)(*2)が今回つけた注。
カードテキストだけ適当に訳してみたが、当時のテキストに従ってるので今のオラクルとは違う。TSBで再録されたカードがあるのは面白い。
今はアラビアンナイトのブースターは1パック 25 万円!とか。この頃は6パックで 1000 ドルだったんだなー、とか、そんなことも面白い記事。当然ながら、他の色の記事は書かれていない。
■白
おれ(*1)はこれまで何年もこの手のレヴューを書いてきたが、単色デッキを組むことを勧めたことは一度もなかった。だが、ついにその日が来たようだ。カード・プールと環境を考えると、アラビアン・ナイトの白は単独でこそ最大の力を発揮する。他の色と組むことは速度を鈍らせるだけだ。
白ウィニーは結構な確率で5ターン・キルを決められる。《Army of Allah》や《Jihad》、そして1~2マナのクリーチャー数体、という編成でだ。もし相手がこの猛攻撃に耐えられても、今度はバンドの悪夢が襲って来て、まあ大抵の場合は屈服することになっちまうだろう。
パックには8枚しかカードが入ってないから、ヘイト・ドラフトなんてしてる暇はないってことは頭に入れといた方がいい。もし、アラビアン・ナイトだけでドラフトする心算だったら、公平な条件を作るためには6パックは必要だろう。つまりひとり頭1000ドルかかる計算になるが、ほんとにこのゲームが好きだったら問題にならない額の筈だ。
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(*1) おれ
この記事の著者は Gary Wise ということになっている。なにせ掲載されていたサイトが Misetings だったので当時はそこもねただろうと信じて疑わなかったのだが、今考えてみると普通に本人が書いてた可能性もあるな。
Gary Wise は当時のプロプレイヤーで、公式サイトで長くリミテッド用のカードレビュー記事を連載していた。超一流には届かなかったプレイヤー、という印象はあるがコミュニティへの貢献度は高い。のちにポーカーに転じたが、そちらでも解説記事のライターをしていたようだ。
Misetings は今は亡きマジックのジョークサイト。
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■カード
《アブー・ジャーファル/Abu Ja’far》
{W}
クリーチャー——Leper
0/1
アブー・ジャーファルが場から墓地に置かれた時、それをブロックしていたか、それにブロックされていたすべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
このちびすけはたしかに邪魔くさい時もあるにはある。が、ぶっちゃけた話、0/1 ってのはなんぼなんでも死にやす過ぎ。もし《Army of Allah》を山ほど持ってるとか、相手が《Juzam Djinn》を山ほど持ってるとか言うんだったら、メインに入るか、あるいはサイド・インの可能性もなくはないが、リミテットで重要な能力はダメージを与えること、だよな。5手目から7手目。
《Army of Allah》
{1}{W}{W}
インスタント
攻撃クリーチャーはターン終了時まで +2/+0 の修整を受ける。
白に《踏み荒らし》があるってのはどうよ? 3マナあれば、ちっぽけな兵士たちが立ちはだかる奴らをばったばったとなぎ倒す破滅の大軍に変身する。6パックのアラビアン・ナイトのドラフトでは、こいつが白ウィニーを組む理由になる。早い順目から、きっちり、いっぱい取ろう。2手目から4手目だ。
《Camel》
{W}
クリーチャー—— Camel
0/1
バンド
Camel と、Camel とバンドを組んでいるすべてのクリーチャーに砂漠から与えられるすべてのダメージを軽減する。
冗談だと思うかも知れんが、単なる事実として、《砂漠/Desert(TSB)》は白ウィニーにとって一番やばいカードなんだ。《Camel》は攻撃では役に立たんだろうが(《Army of Allah》を2枚使うってんなら別だけどな……)、他の連中が環境中もっとも鬱陶しい土地に引っ掛かっちまうことを考えれば、こいつは悪くない。バンドってのはドードー鳥と同時期に死に絶えちまった能力だから、馴染みのない人も居るだろうし、ややこしいルールだが、慣れればなかなか素敵だってことがわかると思うぜ。5手目から7手目。
*cf. ご参考までに
《砂漠/Desert(TSB)》
土地
{T}: あなたのマナ・プールに無色のマナ1点を加える。
{T}: 砂漠は、対象の攻撃クリーチャー1体に1点のダメージを与える。この能力は戦闘終了ステップの間のみプレイできる。
《目には目を/Eye for an Eye(5ED)》
{W}{W}
インスタント
目には目をは、あなたの選んだ、このターンあなたにダメージを与えた発生源ひとつのコントローラーにX点のダメージを与える。Xはその発生源がこのターンあなたに与えたダメージの点数に等しい。
こいつあいけてねえ。もしこっちが選んだ対象へのダメージを置換できるんだったらすげえんだが、残念ながらそうじゃないんで、リミテッドじゃ役に立つ場面がない。サイドボードにしまっとこう。7手目か8手目。
《Jihad》
{W}{W}{W}
エンチャント(場)
Jihad が場に出るに際し、色をひとつと対戦相手をひとり選ぶ。
白のクリーチャーは +2/+1 の修整を受ける。
選ばれたプレイヤーが選ばれた色のパーマネントをコントロールしていないとき、Jihad を生け贄に捧げる。
このセットで2番目に好い白のカード。なんたって《Army of Allah》と同じことをやってのけて、あげくに場に留まるんだ。もちろん白のトリプル・シンボルは問題だが、最初に言ったようにこの環境では白単はむしろあり。だからこいつを見たらがっちりキープして、目に入る白いクリーチャーを片っぱしからドラフトしよう。初手から3手目。
《King Suleiman》
{1}{W}
クリーチャー—— King
1/1
{T}: 対象のジン1体かイフリート1体を破壊する。
さて、ナンバーワンのおでましだ。ぱっと見はただの紙だが、この環境ではこいつはまじでやってくれる。《ジャザム・ジン/Juzam Djinn》、《アーナム・ジン/Erhnam Djinn(JUD)》、《セレンディブのイフリート/Serendib Efreet》、……この小男は、奴ら全部をひざまずかせて、公平な裁きを下してくれる。散らしで入れられることも考えると、セット全体でも最強クラスのカードだろう。3ターン目に砂漠に突っ込んだりしないように。初手取り。
《ムーア人の騎兵/Moorish Cavalry(TSB)》
{2}{W}{W}
クリーチャー——騎兵
3/3
トランプル
4マナあればこの環境ではもっと凄いもんが手に入るんだが、こと白いクリーチャーとなるとこいつが最強。《ウォー・エレファント》とバンドを組んで、あらゆるものを踏みつぶす。レアの“爆弾”カードより高見をすべきじゃないが、クリーチャーが少ない時には《Army of Allah》より優先して取るべき場合もある。初手ないし3手目に。
《篤信/Piety(4ED)》
{2}{W}
インスタント
ブロック・クリーチャーは、ターン終了時まで +0/+3 の修整を受ける。
キュートなトリックだが、攻めて攻めて攻めまくりたいこの環境で、こいつはあまりにも防御的すぎる。もちろん、これより悪いカードはいくらもあるんで、デッキに入らないとは言わないが、それでもできればサイドボードに置いときたいと思うだろう。5手目から7手目。
《悔悟せる鍛冶屋/Repentant Blacksmith(5ED)》
{1}{W}
クリーチャー——鍛冶屋
1/2
プロテクション(赤)
『乞食はもらいを選べない』なんてことわざがあるが、白使いはその乞食だ。とにかくこの環境で白を使うんなら、血の通った肉体を持ってる奴は全部ピックして、《Army》や《Jihad》しなきゃいけない。ここでおれの言う「血の通った肉体」ってのは、パワーが1以上あるってことだ。つまり、こいつはデッキに入る。赤魔道士と当たることを祈ろう。そいつが《Ali》を持ってないことも祈ろう。3手目から5手目ってとこ。
*cf. 《アリ・ババ》のわけないのでたぶんこいつだと思われます。
《Ali from Cairo》
{2}{R}{R}
クリーチャー -- Ali-from-Cairo
0/1
あなたのライフを1より小さくさせるダメージは、かわりにあなたのライフを1まで減少させる。
#《崇拝》の先祖がクリーチャーだったとは……。
《Shahrazad》
{W}{W}
ソーサリー
すべてのプレイヤーは現在のライブラリーをデッキとしてマジックのサブゲームをプレイする。サブゲームに勝てなかった各プレイヤーは自身のライフの半分(端数繰り上げ)を失う。サブゲームの終了後、各プレイヤーはサブゲームで用いた自分がオーナーであるすべてのカードを自分のライブラリーに加えて切り直す。プレイヤーはサブゲームではアンティを賭けない。サブゲームのライブラリーの枚数はフォーマットで要求される枚数より少なくてもよい。
おれはこのカードは大好きだが、まあ全くリミテッド向きじゃないわな。『シエラザード』は素晴らしい物語で、いっぺん読むことを勧めるが、このカードにまつわる物語となるとまあ対戦相手の時間を無駄遣いさせたあげくにあらゆる試合に引き分ける、ってのがせいぜいだろう。自分んちの地下室でならともかく、公認大会で使っちゃいかん。8手目。
《ウォー・エレファント/War Elephant》
{3}{W}
クリーチャー——象
2/2
バンド、トランプル
わお、こいつはいいぜ。象とCavalryがバンドしてもう一頭象がバンドしてもう一隊Cavalryがバンドして 8/8 トランプルにもなりゃ戦闘じゃ死にっこない(*2)。たしかにこいつは4マナ 2/2 だが、白いデッキをまとめあげるかすがいみたいなクリーチャーなんだ。一度使ってみれば、おれの言わんとすることがわかると思う。2手目から4手目。
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(*2)象とCavalryがバンドして……死にっこない
これはそもそもできないし(攻撃時にバンドを組む際にバンドを持ってなくていいのは一体だけ)、8/8 という数字も合っていない。
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原文 Gary Wise / Arabian Nights Limited Review: White
http://misetings.com/article/427(リンク切れ)
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re-giant さんがこんな記事↓を上げていたので、昔訳した記事を引っ張り出してきた。
【翻訳】マジックの世界に変化をもたらした千夜一夜/It happened one nights【DailyMTG】
https://regiant.diarynote.jp/201906092347189528/
訳したのは 2002 年 5 月とからしいのでひと昔どころじゃない昔だった。やんなっちゃう。というわけで訳はほぼまったく直していない。「cf.」と「#」のくだりは当時つけた注で、(*1)(*2)が今回つけた注。
カードテキストだけ適当に訳してみたが、当時のテキストに従ってるので今のオラクルとは違う。TSBで再録されたカードがあるのは面白い。
今はアラビアンナイトのブースターは1パック 25 万円!とか。この頃は6パックで 1000 ドルだったんだなー、とか、そんなことも面白い記事。当然ながら、他の色の記事は書かれていない。
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