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必要に応じて自らを(121 枚のアンカットシートに 101 種類のコモン)
2017年10月17日 ポエム「最小公倍数を求めればいいのでは」
新入り——いいかげん初めて会ってからけっこう長いのだが、あれ以来僕たちのコミュニティには新しい人は来ていないので——が言った。
求めてどうするの、と彼女が面白そうに訊く。ヒント、101 は素数です。
つまり 101 種類アンカットシートが必要ですね。そうなると、カード一種類ずつばらばらに刷って手で混ぜるのと同じことになっちゃうか。
それよりはよく混ざると思うけどね。
隅っこの何枚かは捨てる、っていう運用はありなんですよね? 新入りは訊いた。
もちろん。それはフィラーって言って、実際にされてる運用だから。
んー。
新入りは鉤のように曲げた人指し指を形のいい唇に当てて少しの間考え込むと、
あ、アンカットシートを5枚作ればいいんじゃないですか。それで 605 枚になるから、6枚ずつアサインしていくと 606 になって、一枚だけ捨てればよくなります。
なにを捨てるの? 彼女がにこやかに訊いた。
え? ……あ、これだと紙じゃなくてインクの方を捨ててますね。
新入りは眉根に軽くしわを寄せた。あたし自分で思ってる以上に頭悪いな。
彼女が僕の方に視線を向けた。僕はうなずく。
「今のでほぼ正解なんだよ」 彼女は新入りのほうに向き直って言った。
えっ? そうなんですか?
「『ネットのうわさによると』」 僕は言いかけたが、彼女がすぐに口を挟んだ。いや、マローが自分のtumblrで認めてたでしょうが。
マーク・ローズウォーター、でしたっけ?
そう。あの「本当にすごいんだ!」のひと。
ひどい説明だな……。
僕はつぶやいたが、新入りはにっこりと笑った。でも、よくわかりましたよ。
肩をすくめてから僕は説明をはじめた。
アンカットシート5枚に対してコモン100種類を6回ずつ割り振って、最後の1種類は5回だけ割り振る、ってところまでは間違いないというか、さっきサキモトが言ったようにマローが非公式に認めてるところ。まあ事実と考えていいとおもう。それで、具体的な割り振りは推測するしかないんだけど、海の向こうの閑人たちががっつり調べてて、いくつかのセットについてはわかってるみたいなんだよね。
僕は言いながらかばんから取り出した裏紙に書き始めた。典型的なのはこういう感じらしい。
これで 33+27+22+18+1 で 101 種類。で、このシートを 3:2 の割合で刷れば、100 種類のカードは6回ずつ出現して、最後の (Z) だけが5回出現することになる。これはまさにさっきあなたが言った通り、6枚ずつアサインしていって最後に一枚だけ捨てる、っていう操作だよね。
新入りは僕の汚い書き付けを少しのあいだ見ていたが、目を輝かせて肯いた。
はい、そうなります! そっか、必ずしもそれぞれのアンカットシートを同じ枚数刷らなくてもいいんですね。
そういうこと。
でもこうすると、この (Z) だけ微妙に希少価値が出るんじゃないですか。「レアコモン」みたいにならないですか。
ネットのうわさが正しければ、むしろすでにそうなってるんだよね。
彼女が応じた。で、マローが言うには、でも別にそれで特に問題ない、なんといっても所詮はコモンとアンコモンの間の希少度に過ぎないんだから、ってことみたい。実際、たとえば M13 ではこのレアコモンは《進化する未開地》らしいんだけど、特に高かったりはしないよね。まあもうめちゃめちゃ再版されまくってるし、構築では普通出番がないカードだし、高くなるはずもないんだけど。
そういうカードを選んでアサインするんですかね。
これもマローいわく、「アーティファクトか土地で、サイクルになってないカードを選ぶことが多い」だってさ。
「……なるほど」
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次回に続きます。
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「ネットのうわさによると」の元ネタは『電脳コイル』。
新入り——いいかげん初めて会ってからけっこう長いのだが、あれ以来僕たちのコミュニティには新しい人は来ていないので——が言った。
求めてどうするの、と彼女が面白そうに訊く。ヒント、101 は素数です。
つまり 101 種類アンカットシートが必要ですね。そうなると、カード一種類ずつばらばらに刷って手で混ぜるのと同じことになっちゃうか。
それよりはよく混ざると思うけどね。
隅っこの何枚かは捨てる、っていう運用はありなんですよね? 新入りは訊いた。
もちろん。それはフィラーって言って、実際にされてる運用だから。
んー。
新入りは鉤のように曲げた人指し指を形のいい唇に当てて少しの間考え込むと、
あ、アンカットシートを5枚作ればいいんじゃないですか。それで 605 枚になるから、6枚ずつアサインしていくと 606 になって、一枚だけ捨てればよくなります。
なにを捨てるの? 彼女がにこやかに訊いた。
え? ……あ、これだと紙じゃなくてインクの方を捨ててますね。
新入りは眉根に軽くしわを寄せた。あたし自分で思ってる以上に頭悪いな。
彼女が僕の方に視線を向けた。僕はうなずく。
「今のでほぼ正解なんだよ」 彼女は新入りのほうに向き直って言った。
えっ? そうなんですか?
「『ネットのうわさによると』」 僕は言いかけたが、彼女がすぐに口を挟んだ。いや、マローが自分のtumblrで認めてたでしょうが。
マーク・ローズウォーター、でしたっけ?
そう。あの「本当にすごいんだ!」のひと。
ひどい説明だな……。
僕はつぶやいたが、新入りはにっこりと笑った。でも、よくわかりましたよ。
肩をすくめてから僕は説明をはじめた。
アンカットシート5枚に対してコモン100種類を6回ずつ割り振って、最後の1種類は5回だけ割り振る、ってところまでは間違いないというか、さっきサキモトが言ったようにマローが非公式に認めてるところ。まあ事実と考えていいとおもう。それで、具体的な割り振りは推測するしかないんだけど、海の向こうの閑人たちががっつり調べてて、いくつかのセットについてはわかってるみたいなんだよね。
僕は言いながらかばんから取り出した裏紙に書き始めた。典型的なのはこういう感じらしい。
アンカットシート1:
Aグループ 33種類を2回ずつ割り振り
C1グループ 27種類を2回ずつ割り振り+1種類(Z)を1回だけ割り振り
アンカットシート2:
Bグループ 22種類を3回ずつ割り振り
C2グループ 18種類を3回ずつ割り振り+1種類(Z)を1回だけ割り振り
これで 33+27+22+18+1 で 101 種類。で、このシートを 3:2 の割合で刷れば、100 種類のカードは6回ずつ出現して、最後の (Z) だけが5回出現することになる。これはまさにさっきあなたが言った通り、6枚ずつアサインしていって最後に一枚だけ捨てる、っていう操作だよね。
新入りは僕の汚い書き付けを少しのあいだ見ていたが、目を輝かせて肯いた。
はい、そうなります! そっか、必ずしもそれぞれのアンカットシートを同じ枚数刷らなくてもいいんですね。
そういうこと。
でもこうすると、この (Z) だけ微妙に希少価値が出るんじゃないですか。「レアコモン」みたいにならないですか。
ネットのうわさが正しければ、むしろすでにそうなってるんだよね。
彼女が応じた。で、マローが言うには、でも別にそれで特に問題ない、なんといっても所詮はコモンとアンコモンの間の希少度に過ぎないんだから、ってことみたい。実際、たとえば M13 ではこのレアコモンは《進化する未開地》らしいんだけど、特に高かったりはしないよね。まあもうめちゃめちゃ再版されまくってるし、構築では普通出番がないカードだし、高くなるはずもないんだけど。
そういうカードを選んでアサインするんですかね。
これもマローいわく、「アーティファクトか土地で、サイクルになってないカードを選ぶことが多い」だってさ。
「……なるほど」
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次回に続きます。
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「ネットのうわさによると」の元ネタは『電脳コイル』。
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