もうこの件については何もしないって書いたな。あれは嘘だ。もしくは、気が変わった。おれはひとこと言いたいんだ。この記事を読んだからだ。後半の、コンバットのくだりだ。

http://team-cygames.com/2017/03/31/2850/

別に発言者を責めたいわけじゃない。言ってることは正しいし、プロプレイヤーという立場としてはみんなルールをきちんと知ってちゃんとやろうよ、って主張は当たり前のことだ。それはいい。おれが言いたいことはつきつめればひとつだけだ。


このルールはおかしい。


あらためて整理しよう。おれが考えるコンバット問題は以下の通りだ。
(1) 単純に、「コンバット」「戦闘入ります」という言葉は戦闘フェイズに入る(=戦闘開始ステップに入る)ことを想起させる文言であるにもかかわらず、実際にはそうではない、ということ。
【マジック・イベント規定 4.2 「イベントでの手順省略」参照】
(2) そして、そうなっていることによって、戦闘フェイズに入ってから「クリーチャーランドを起動して攻撃」もしくは「機体に搭乗して攻撃」などのプレイが阻まれることがあること。

手順省略も、広義のルールのひとつだ。ルールをより深く知るものは利益を得られることがある、というのはマジックの、トーナメントレベルにおける重要な原則だ。しかしおれが思うに、そのルールというのは
・攻撃クリーチャー指定ステップに入ってしまったら、もうクリーチャーランドを起動したり機体に搭乗したりすることはできない。
というようなものであるべきであって
・「戦闘入ります」と口にするとなぜか戦闘開始ステップではなくて攻撃クリーチャー指定ステップまで進んでしまう。
というようなものであるべきではない。

そしてこれはルールの周知とか啓蒙が不足しているから起きているわけではない。昨日今日始まった話じゃないのだ。おれが覚えてるだけでもこれが話題に上った一番古い回は 2008 年だ。
http://74598.diarynote.jp/?day=20080808
http://bastermtg.blog.fc2.com/?no=306
もう9年前なんだよ。その間に世界中でのべ何人がのべ何回間違えたか。
間違える人が後を絶たないのは、上の (1) が本質的におかしくて、プレイヤーの誤解を誘発し続けるからだ。直感に完全に反した定義になっているからだ。
手順の省略をわざわざ定義するのは、おたがいのコミュニケーションをスムーズにするため、だろう。それがプレイヤーの意図と反するプレイをさせてしまうのであれば、手順省略を定義する意図とは真逆のことが起きているんじゃないか。


少し前、プロツアー『霊気紛争』の8回戦のフィーチャーマッチ、Thien Nguyen 対 Cesar Segovia 戦でもまさにこの事例があった。Segovia はうっかり「combat」って言っちゃってから搭乗しようとして、即ジャッジを呼ばれた。プロツアーに出てる人でもやってしまうミスだということだ。
これについて殿堂プレイヤーのカイ・ブッディ氏がフェイスブックで書いている。
someone somewhere decided that saying the word ’combat’ means you’re declaring attackers. That’s the first time I’ve heard this. Both me and my opponents have declared ’combat’ thousands of times to enter the combat step.
https://www.facebook.com/kai.budde.96/posts/1024435894329421 

殿堂プレイヤーともなるとイベント規定とかは読まないらしい。それにしても初耳ってこたないでしょとは思うし、これはプレイヤーとして望ましい態度ではない。読めよ、ルール。
だけど、というか、だからこそ、というか。
Ruling that saying ’combat’ means you’re skipping straight from your main phase to declare attackers is beyond insane to me.

おれはこの意見に賛成する。beyond insane とまでは言わないけど。

そろそろ終わりにしよう。これが8年も放置されてきたのは、ルールそのものと同じくらいおかしい。大通りに穴が空いてるのに、「道の右側を通れば大丈夫ってアナウンスしてるから平気です」って言い張ってるみたいなもんだ。それで8年間新参のプレイヤーが穴に落ち続けてるんだよ。穴をふさげよ、穴を。

少なくとも、「コンバット」とか「戦闘入ります」を攻撃クリーチャー指定ステップまでのショートカットと見なすのはもうやめよう。戦闘開始ステップまでのショートカットでいいじゃないか。コンバット、変わり谷起動します、アタック。今よりずっと直感的だ。その方がいいゲームだろう。


--

ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社にはメールを出してみた。上に書いたようなことをもう少し整理した内容(を書いたつもり)だ。おれはもう何年も認定トーナメントには出てないし、正直なところこのルールがどうであっても直接受ける影響はまったくない。それでも何も言わずにいるのはもういやになってしまった。

コメント

nophoto
通りすがり
2017年4月9日12:57

この話題いまいち理解してなかったのですが「コンバット」って発言を省略行動として規定されてるのが争点だったんですね。今まで自分ではステップまでいってたのでどうも範疇外にいました
まーなんというかごもっともですね。MOですらどこで優先権を止めるのか自分で決めるのに、現実で決められないはずがないですし、なんの発言がなんの省略か自由じゃないのは俺も納得いかないです
>>「道の右側を通れば大丈夫ってアナウンスしてるから平気です」って言い張ってるみたいなもん
これちょっと面白かったですねwアナウンスどころか交通情報にのせてるから調べて知らないほうが悪い、ってレベルですからねこれw

高潮の
2017年4月9日23:34

そうです。この件は手順省略の定義が最大の問題と思います。ステップまで宣言されているのであれば問題は生じないはずです。
手順省略に(特によく使われるものについては)決まった定義を与えておくことはミスコミュニケーションを防ぐ上で意味があると考えます。ですからあなたの「なんの発言がなんの省略か自由じゃないのは俺も納得いかないです」という意見には賛同しません。本件は定義そのものがまずいと思います。
穴のくだりはなんか感情に任せて書いちゃったので(それ言ったらこのエントリ全体がそうですが)、あんまりよくなかったかもしれません。

kondohi
2017年4月10日8:29

省略したいなら「コンバット」じゃなくて「アタック」と宣言するようにすればいいと思うんですが慣れって難しいですよね

nophoto
通行人
2017年4月10日18:15

素人考えかもしれませんが、「戦闘入ります」の宣言で戦闘開始ステップまでしか進まないとした場合、このあと攻撃クリーチャーを指定するためにはさらに両者のパスが必要ですよね。
つまり「戦闘入ります」「いいですよ」の直後に攻撃クリーチャーを指定することができなくなります。
さらにイベント規定4.2の「プレイヤーは優先権を要求し、何もしないことを選んではならない。」により、このやり取りのあと何もせず攻撃クリーチャー指定ステップに移行しようとすることも認められないように思えます。
この辺は実際のところどうなんでしょうか。

nophoto
名無し
2017年4月11日21:54

この手の話題で、人様の場に持論を投げて失せるのも、不躾であると思いながらも、どうしてもと思い、一つコメントをお許しください。

自分も普段、コンバットを戦闘開始と思っているもので、カジュアルプレイヤーではあるものの、改めてイベント規定(2017年1月20日発効分)を確認しました。
mtg-jp.com/rules/docs/JPN_MTR.html
気になったのは、4.3 順序違いの連続行動の部分です。

対戦相手は必要な時点で対応するために、正しい順序で行なうようにプレイヤーに求めても良い。(その場合、それ以降に行なわれる行動は一旦取り消され、そのまま行動する義務は生じない)。
例:ブロック・クリーチャー指定を始めてから、《樹上の村》を起動してそれでブロックした。

つまりこれは、「コンバットは攻撃指定のことな」と同時に、「コンバット、変わり谷、って言われてタッパーしたきゃ巻き戻そうぜ」というのが、現行ルール意図なのではないでしょうか。
だから、おかしいのは実はルールではなくて、巻き戻しに毎度ジャッジ呼ぶイチャモンザギャザリングのほうで、本来もっと積極的に「待って待って」って言えるゲームとしてデザインされているのでは…というのは、楽観が過ぎるでしょうか。

最後になりましたが、以前、新フォーマットについてのコメント、お返事頂きありがとうございました。

高潮の
2017年4月12日0:46

それが直感的ってことですよね。どうして今のようになったのか、普通に不思議です。

高潮の
2017年4月12日0:47

そうなりますね。「攻撃クリーチャーステップまでの手順省略」の方が便利だしよく使うのは間違いないです。でも、それに「コンバット」って言葉をアサインするぐらいなら、多少不便でも戦闘開始ステップまでの手順省略になっている方がずっとよい、と考えます。
それで、すみません、自分も素人ですが、優先権の要求ってそういうことではないのではないでしょうか。むしろ「アタック」って言われたときに、「待ってくれ、第1メインフェイズに優先権をくれ」みたいなことなのでは。そうしたときに「やっぱりパス」は無しだよ、というのがそのルールの趣旨なのだと思っていました。この辺は識者の降臨を待ちたいです。降臨?
もしあなたのおっしゃるような解釈だと、AP は常に次に自分が動くタイミングまで手順を省略しなければならなくなるように思います。それはずいぶん奇妙な気がします。

高潮の
2017年4月12日0:48

すみません、また後日コメント返します。ちょっと時間をください。

高潮の
2017年4月17日23:45

すみません、お待たせしました。
自分の考えでは、これが「順序違いの連続行動」に該当する場面は相当限定されると思います。おっしゃるような——「コンバット、変わり谷、って言われてタッパーしたきゃ巻き戻そうぜ」——例であれば許容されるべきと考えますが、それはあくまで「連続行動」の場合についてのみであって、「コンバット」「どうぞ」の時点でもう該当しなくなると思います。そしてそれはルールとしてもそうあるべきです。
それと、自分は本件についてはプレイヤーの振る舞いは問題とは思ってないです。あるルールが存在する時にそのルールに従っている人を非難するのは間違っています。皆がルールに従っているにもかかわらず、問題が生じたり、なにかがおかしいと感じられたりするのであればルールに不適当なところがあるのではないかと考えるべきです。ルールには従うべきだし、従っている人は正しい、と考えることと、「でもこのルールはおかしい」と主張することは両立すると思っています。

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