「しかし週のど真ん中だっつーのに」
後輩が半分笑いながら言った。「わざわざ仕事上がりに人んちにお邪魔してマジックやろうってのもまあなんというか、すみませんねほんとに」
あたしが悪いんです、と“新入り”が横から言う。金曜日が空いてなかったもんですから。
いや、いいんだよ、もともとわたしが用事あるから変えてもらったんだ。
彼女が少し慌てた様子で言った。あ、そこの建物。こげ茶色の。
え、ここですか。
新入りがいかにも若者らしい率直さで聞いた。めちゃめちゃ近くないですか。
確かに集合した JR のとある駅から彼女の部屋までまだ5分と歩いていない。
駅からの近さを第一の基準にしたんだよ。彼女はさらりと言うとバッグから鍵を取り出して、エントランスのオートロックを解除した。僕たちは各々コンビニの袋を提げたままぞろぞろとあとに続く。
エレベーターを降りて部屋に向かう通路も内廊下で、ぴしりとカーペットが敷かれている。なんとなく気後れしながら歩を進めた。
「どうぞ。上がってください」
部屋に入ると彼女は言い置いて、先に立って両側に一枚ずつ扉のある短い廊下の先の広くなっている方へすたすたと歩いていった。
「おじゃましまーす」「お邪魔します」
口々に言いながら僕たちは遠慮がちに上がり込み、ついきょろきょろしたりしながら彼女の後を追った。
きれいなお部屋ですね。
新入りが言うと彼女は笑いながら応じた。昨日必死で掃除したからね。
や、そうではなくて、建物そのものも、廊下とかも、まだ新しそうだし、造りがしっかりしているっていうか。
それはどうも。棟梁に伝えとくよ。
「棟梁いねえだろ」「じゃあ現場監督?」
僕は新入りの観察力に感心していた。実際この建物の築年数はおそらくまだ比較的浅いし、内装にもそれなりに金がかけられている。
広い LDK の壁面には天井まで届くスライド本棚があって、見えている面にはぱっと見た限りでは小説ばかりが作者別に綺麗に並べられていた。ここも整理したのだろうか。本棚と別の壁面にはテレビ台が置かれていて、その上には部屋の大きさに対して明らかに小さすぎるテレビが載っている。
中央には長方形のラグが敷かれていて、その上にこの部屋に一番似つかわしくない家具である長方形の座卓が置かれていた。布団こそ被せられていなかったがそれが電気炬燵であることは想像がつく。その周りに揃いの小さな座布団が5枚並べられていた。
床で申し訳ないけど、その辺に適当にお座りください、と彼女が言い、僕たちはそれぞれ自分の座布団をなんとなく定めて、コンビニ袋をその陣地の前の座卓に置いた。
——これで家賃いくらだ。
奴が聞いた。僕はその空気の読めなさに感謝した。
わたしがオーナーだよ。
え? 買ったの?
うん。
みんなおお、とかええっ、とか感嘆のリアクションを示したが、意味のあることは誰も言わなかった。
そんなに驚かなくてもいいでしょ。
彼女は笑いながら言った。さあ、とりあえず食べちゃおう。勝負はそれからだ。
それぞれに自分の陣地に腰を下ろし、コンビニ袋から食事を取り出す。僕はこういう時はサンドイッチを選びがちだ。ゲームが大好きすぎてパンで具をはさんだ食事を作らせたという人物に大いに尊敬と共感の念を抱いている。
お湯ってもらえます? 新入りがスープパスタのフィルムを剥きながら聞いている。
あ、そうだったよね。今沸かすよ。彼女は台所の方に立っていって、ティファールのらしき電気ケトルに慣れた手つきで水を注いだ。ほかにお湯欲しい人いますか。
いや、……いなさそう。大丈夫。
「あとビール飲みたい人居たら言ってね。ビールだけはあるから」
彼女が告げると奴がすぐに反応した。ビール何あるんだよ。
いろいろあるよ。秋味、チンタオビール、プレミアムモルツ、金麦、オールフリー、…そんなもんかな。
最後の方ビールじゃねえじゃねえか。まあまあ、昔は発泡酒よく飲んだじゃん。なんかオランダとかベルギーとかの。
プレミアムモルツなんて飲んだっけ。
僕は独り言のつもりで言ったのだが、意図したより声が大きかったのか、彼女が反応した。「さいきん始めました」
結局僕以外の全員がビールを飲むことを選択した。こうなったら負けるわけにはいかない。勝負事でアルコールを入れた奴は必ず負けると僕は固く信じている。たとえどれほどのデッキ相性差があったとしてもだ。
プレリリースって誰か行った?
奴が焼きそば弁当を食べる合間に聞くと、後輩がおにぎりを口に運ぶ手を休めて満面の笑みで応じた。待ってましたよその質問を。そう言いながら鞄からなにかを取り出す。
まじか。引いたの? うえー。
きょとんとしている新入り以外の3人が悲鳴に近い声をあげた。
ハードケースに入った箔押しのカード——プレミアム神話レア版の《溢れかえる岸辺》だった。
しかもフェッチかよ。相変わらず引き強いなあ。
まぶしー、神々しー。
「そんなに強いカードなんですか?」 新入りがまだ事態を飲み込めていない様子で訊いてくるので、僕は教えてやる。
「うん。プレミアム神話レアです」
「プレミアム神話レア」
「店で買えば300ドル」
「300ドル」
その微妙にゲスい説明止めてください、と後輩が笑って言うので僕は敢えて反論しなかったが、実際僕は事実以外のことは伝えていないということはここで確認しておきたい。
今回のセットの目玉のカードで、昔の強いカードのイラスト違いなんだけどフォイルで枠のレイアウトも特別で、たぶん 150 パックに1枚ぐらいしか入ってないみたい。というような普通の説明はその後彼女が新入りにしてくれていた。
ただねー、引いといて文句言うのもほんとあれなんですけどねー。
後輩は座卓に置いたカードを見ながら言った。テキストボックスは半透明じゃなくて透明にして欲しかった。
「ああ、ゲームデープロモみたいな感じ?」 彼女が聞いた。
そうです。でも、最近のじゃなくて、ちょっと前のあのほんとに外枠しかなかった奴がいいと思うんですよね。ネットで画像作ってた人がいるんですけど、あ、これこっちの方がいいわーって思って。
後輩はスマートフォンを操作して、目当てのブログ(http://acesimper.diarynote.jp/201509172216103521/)とそこに貼ってある画像を表示してみせた。説明でだいたいのイメージはつかめていたが、実際見せられてみると説得力があった。たしかにこっちの方が見てみたかった。そのブログのコメント欄にもある通り、ただでさえ可読性が低いのに色の識別も難しいのでプレイに支障が出る、という側面はあるのだろうけど、これらのカードを実際ゲームで使う人がどれだけいるか。
透明にしてほしかったのは賛成だけど、わたしは枠がある方が好きだな。それこそ最近のゲームデープロモの奴みたいな。
彼女はそう言いながら自分のスマートフォンにプロモ版《衰滅》の画像(http://mtg-jp.com/publicity/img/20150624a/JP_coiq84kyu3.jpg)を表示させる。たしかにこちらも中々に魅力的なデザインではあった。
プレリリースって、あの発売一週間前ぐらいにやる大会ですよね?
新入りが聞いた。
あ、ごめん、そうそう。この前の土日がちょうどそうだったんだよ。
前に一回だけ出たことあります。新たなるファイレクシアだったかな。
……どうだった?
彼女が聞くと新入りは即座に応じた。
ゼロ勝三敗とかでしたね。全然勝てなくて、結構悔しかったの憶えてます。
へえ、最初に出てくるのが勝敗なんだ、と思いかけたときに、新入りは苦笑いを浮かべて続けた。あと、試合終わった後やたら長々とデッキについてアドバイスくれたりとか、握手求めてくる人とかいて、それはちょっとうわーってなりました。
ああ……。
彼女が目を伏せた。あるんだよねえ、そういうの。わたしですら握手求められたことあるからなー……。
あ、でも真剣に勝負するの自体は面白かったですよ。構築時間とか、試合時間とかもちゃんと決まってるじゃないですか。あの感じは新鮮でよかったです。
無理にフォローしなくてもいいんだよ?
後輩が言って笑いが起き、ちょっと空気が和んだ。
「来週の土曜日、この面子でシールド戦やるんですけど」
なんとなくというか、行きがかり上というか、僕は切り出していた。「新しいセットが出るといつもやるんだけど、よかったらタニカワさんもどうですか」
え、いいんですか。やりたいです!
新入りの少し低い声がちょっと上擦った。でも、あたしが入ると5人になっちゃうから、ひとりあぶれちゃいませんか。
それは今日ここに来る前に心配するべきだったかもね。
彼女が言うと、新入りはつりこまれるように笑った。あは、それもそうですね。
あれ、来週って場所はどこなんだっけ。カード法師でいいんだっけ?
ここでいいんじゃないの。
彼女が言った。みんながよければ、だけど。お店でやると抜け番の人ちょっと気の毒じゃない。
いいんですか、そんな、今週も来週もで。
後輩が聞いたが、彼女はさして気にする様子もなく、いいよ、十日ぐらいならむしろ掃除した状態をキープできるし、と応じた。
じゃあすみません、お言葉に甘えてお邪魔するということで。11 時からでよろしいでしょうか。
いいよ。10 時には入れるようにしておくから、早く来てレガシーやりたい人とかは早く来てもいいよ。
「さて、飯終わった奴、勝負するか」
奴が空になった焼きそば弁当の殻をコンビニ袋に突っ込みながら言った。「どいつが相手だ」
いや、そこはタニカワさんと対戦しましょうよ。
後輩が言ったが、新入りは首を横に振った。すみません、まだ食べ終わってないので、お先にどなたか。
「じゃあおれと勝負だ」
僕が言うと奴は普通に顔をしかめてみせた。それ一番希少性が低い対戦じゃねえか。
ライバル同士の名勝負、ってことでひとつ。
僕はデッキケースからデッキを取り出し、座卓の上でシャッフルし始めた。
--
一昨日書いた目的の話でいうと今回などはめちゃめちゃ S/N 比が低い。ひとことで言えば「長い!!」。
ちなみに今回は5人(つまり全員)いるのだが、それすら伝わっている自信がない。だからほんとはシグナルノイズもくそもないのかも知れない。
--
これで 30 回目、らしいです。
後輩が半分笑いながら言った。「わざわざ仕事上がりに人んちにお邪魔してマジックやろうってのもまあなんというか、すみませんねほんとに」
あたしが悪いんです、と“新入り”が横から言う。金曜日が空いてなかったもんですから。
いや、いいんだよ、もともとわたしが用事あるから変えてもらったんだ。
彼女が少し慌てた様子で言った。あ、そこの建物。こげ茶色の。
え、ここですか。
新入りがいかにも若者らしい率直さで聞いた。めちゃめちゃ近くないですか。
確かに集合した JR のとある駅から彼女の部屋までまだ5分と歩いていない。
駅からの近さを第一の基準にしたんだよ。彼女はさらりと言うとバッグから鍵を取り出して、エントランスのオートロックを解除した。僕たちは各々コンビニの袋を提げたままぞろぞろとあとに続く。
エレベーターを降りて部屋に向かう通路も内廊下で、ぴしりとカーペットが敷かれている。なんとなく気後れしながら歩を進めた。
「どうぞ。上がってください」
部屋に入ると彼女は言い置いて、先に立って両側に一枚ずつ扉のある短い廊下の先の広くなっている方へすたすたと歩いていった。
「おじゃましまーす」「お邪魔します」
口々に言いながら僕たちは遠慮がちに上がり込み、ついきょろきょろしたりしながら彼女の後を追った。
きれいなお部屋ですね。
新入りが言うと彼女は笑いながら応じた。昨日必死で掃除したからね。
や、そうではなくて、建物そのものも、廊下とかも、まだ新しそうだし、造りがしっかりしているっていうか。
それはどうも。棟梁に伝えとくよ。
「棟梁いねえだろ」「じゃあ現場監督?」
僕は新入りの観察力に感心していた。実際この建物の築年数はおそらくまだ比較的浅いし、内装にもそれなりに金がかけられている。
広い LDK の壁面には天井まで届くスライド本棚があって、見えている面にはぱっと見た限りでは小説ばかりが作者別に綺麗に並べられていた。ここも整理したのだろうか。本棚と別の壁面にはテレビ台が置かれていて、その上には部屋の大きさに対して明らかに小さすぎるテレビが載っている。
中央には長方形のラグが敷かれていて、その上にこの部屋に一番似つかわしくない家具である長方形の座卓が置かれていた。布団こそ被せられていなかったがそれが電気炬燵であることは想像がつく。その周りに揃いの小さな座布団が5枚並べられていた。
床で申し訳ないけど、その辺に適当にお座りください、と彼女が言い、僕たちはそれぞれ自分の座布団をなんとなく定めて、コンビニ袋をその陣地の前の座卓に置いた。
——これで家賃いくらだ。
奴が聞いた。僕はその空気の読めなさに感謝した。
わたしがオーナーだよ。
え? 買ったの?
うん。
みんなおお、とかええっ、とか感嘆のリアクションを示したが、意味のあることは誰も言わなかった。
そんなに驚かなくてもいいでしょ。
彼女は笑いながら言った。さあ、とりあえず食べちゃおう。勝負はそれからだ。
それぞれに自分の陣地に腰を下ろし、コンビニ袋から食事を取り出す。僕はこういう時はサンドイッチを選びがちだ。ゲームが大好きすぎてパンで具をはさんだ食事を作らせたという人物に大いに尊敬と共感の念を抱いている。
お湯ってもらえます? 新入りがスープパスタのフィルムを剥きながら聞いている。
あ、そうだったよね。今沸かすよ。彼女は台所の方に立っていって、ティファールのらしき電気ケトルに慣れた手つきで水を注いだ。ほかにお湯欲しい人いますか。
いや、……いなさそう。大丈夫。
「あとビール飲みたい人居たら言ってね。ビールだけはあるから」
彼女が告げると奴がすぐに反応した。ビール何あるんだよ。
いろいろあるよ。秋味、チンタオビール、プレミアムモルツ、金麦、オールフリー、…そんなもんかな。
最後の方ビールじゃねえじゃねえか。まあまあ、昔は発泡酒よく飲んだじゃん。なんかオランダとかベルギーとかの。
プレミアムモルツなんて飲んだっけ。
僕は独り言のつもりで言ったのだが、意図したより声が大きかったのか、彼女が反応した。「さいきん始めました」
結局僕以外の全員がビールを飲むことを選択した。こうなったら負けるわけにはいかない。勝負事でアルコールを入れた奴は必ず負けると僕は固く信じている。たとえどれほどのデッキ相性差があったとしてもだ。
プレリリースって誰か行った?
奴が焼きそば弁当を食べる合間に聞くと、後輩がおにぎりを口に運ぶ手を休めて満面の笑みで応じた。待ってましたよその質問を。そう言いながら鞄からなにかを取り出す。
まじか。引いたの? うえー。
きょとんとしている新入り以外の3人が悲鳴に近い声をあげた。
ハードケースに入った箔押しのカード——プレミアム神話レア版の《溢れかえる岸辺》だった。
しかもフェッチかよ。相変わらず引き強いなあ。
まぶしー、神々しー。
「そんなに強いカードなんですか?」 新入りがまだ事態を飲み込めていない様子で訊いてくるので、僕は教えてやる。
「うん。プレミアム神話レアです」
「プレミアム神話レア」
「店で買えば300ドル」
「300ドル」
その微妙にゲスい説明止めてください、と後輩が笑って言うので僕は敢えて反論しなかったが、実際僕は事実以外のことは伝えていないということはここで確認しておきたい。
今回のセットの目玉のカードで、昔の強いカードのイラスト違いなんだけどフォイルで枠のレイアウトも特別で、たぶん 150 パックに1枚ぐらいしか入ってないみたい。というような普通の説明はその後彼女が新入りにしてくれていた。
ただねー、引いといて文句言うのもほんとあれなんですけどねー。
後輩は座卓に置いたカードを見ながら言った。テキストボックスは半透明じゃなくて透明にして欲しかった。
「ああ、ゲームデープロモみたいな感じ?」 彼女が聞いた。
そうです。でも、最近のじゃなくて、ちょっと前のあのほんとに外枠しかなかった奴がいいと思うんですよね。ネットで画像作ってた人がいるんですけど、あ、これこっちの方がいいわーって思って。
後輩はスマートフォンを操作して、目当てのブログ(http://acesimper.diarynote.jp/201509172216103521/)とそこに貼ってある画像を表示してみせた。説明でだいたいのイメージはつかめていたが、実際見せられてみると説得力があった。たしかにこっちの方が見てみたかった。そのブログのコメント欄にもある通り、ただでさえ可読性が低いのに色の識別も難しいのでプレイに支障が出る、という側面はあるのだろうけど、これらのカードを実際ゲームで使う人がどれだけいるか。
透明にしてほしかったのは賛成だけど、わたしは枠がある方が好きだな。それこそ最近のゲームデープロモの奴みたいな。
彼女はそう言いながら自分のスマートフォンにプロモ版《衰滅》の画像(http://mtg-jp.com/publicity/img/20150624a/JP_coiq84kyu3.jpg)を表示させる。たしかにこちらも中々に魅力的なデザインではあった。
プレリリースって、あの発売一週間前ぐらいにやる大会ですよね?
新入りが聞いた。
あ、ごめん、そうそう。この前の土日がちょうどそうだったんだよ。
前に一回だけ出たことあります。新たなるファイレクシアだったかな。
……どうだった?
彼女が聞くと新入りは即座に応じた。
ゼロ勝三敗とかでしたね。全然勝てなくて、結構悔しかったの憶えてます。
へえ、最初に出てくるのが勝敗なんだ、と思いかけたときに、新入りは苦笑いを浮かべて続けた。あと、試合終わった後やたら長々とデッキについてアドバイスくれたりとか、握手求めてくる人とかいて、それはちょっとうわーってなりました。
ああ……。
彼女が目を伏せた。あるんだよねえ、そういうの。わたしですら握手求められたことあるからなー……。
あ、でも真剣に勝負するの自体は面白かったですよ。構築時間とか、試合時間とかもちゃんと決まってるじゃないですか。あの感じは新鮮でよかったです。
無理にフォローしなくてもいいんだよ?
後輩が言って笑いが起き、ちょっと空気が和んだ。
「来週の土曜日、この面子でシールド戦やるんですけど」
なんとなくというか、行きがかり上というか、僕は切り出していた。「新しいセットが出るといつもやるんだけど、よかったらタニカワさんもどうですか」
え、いいんですか。やりたいです!
新入りの少し低い声がちょっと上擦った。でも、あたしが入ると5人になっちゃうから、ひとりあぶれちゃいませんか。
それは今日ここに来る前に心配するべきだったかもね。
彼女が言うと、新入りはつりこまれるように笑った。あは、それもそうですね。
あれ、来週って場所はどこなんだっけ。カード法師でいいんだっけ?
ここでいいんじゃないの。
彼女が言った。みんながよければ、だけど。お店でやると抜け番の人ちょっと気の毒じゃない。
いいんですか、そんな、今週も来週もで。
後輩が聞いたが、彼女はさして気にする様子もなく、いいよ、十日ぐらいならむしろ掃除した状態をキープできるし、と応じた。
じゃあすみません、お言葉に甘えてお邪魔するということで。11 時からでよろしいでしょうか。
いいよ。10 時には入れるようにしておくから、早く来てレガシーやりたい人とかは早く来てもいいよ。
「さて、飯終わった奴、勝負するか」
奴が空になった焼きそば弁当の殻をコンビニ袋に突っ込みながら言った。「どいつが相手だ」
いや、そこはタニカワさんと対戦しましょうよ。
後輩が言ったが、新入りは首を横に振った。すみません、まだ食べ終わってないので、お先にどなたか。
「じゃあおれと勝負だ」
僕が言うと奴は普通に顔をしかめてみせた。それ一番希少性が低い対戦じゃねえか。
ライバル同士の名勝負、ってことでひとつ。
僕はデッキケースからデッキを取り出し、座卓の上でシャッフルし始めた。
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一昨日書いた目的の話でいうと今回などはめちゃめちゃ S/N 比が低い。ひとことで言えば「長い!!」。
ちなみに今回は5人(つまり全員)いるのだが、それすら伝わっている自信がない。だからほんとはシグナルノイズもくそもないのかも知れない。
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これで 30 回目、らしいです。
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座布団の数に感謝です。