そこを深い溝が縦横に走り(プレミアム神話レアの封入率)
2015年9月6日 ポエム コメント (6)「やっぱ戦乱のゼンディカーの土地がちょっとしょっぱいからこういうの入れることにしたのかな」
彼女がスマートフォンを見ながら言った。
「え、しょっぱいかな、あれ——」
僕は言ってからあれの適切な呼び名が決まっていないことに気付いた。「——あれ、なんて呼べばいいんだろう。三枚目ランド?」
きみほんとネーミングセンス悪いよね。
彼女に一点の緩みもない真顔で言われてさすがに僕もなにか悪いことをしたような気に一瞬なった。「……三枚目だけにね」
「やかましい」
……まあ、1ターン目と2ターン目にはほぼタップインなわけだからテンポは悪いか。基本地形とフェッチランドをある程度採用してないと3ターン目4ターン目でも全然タップインするし、そう考えるとかなり厳しいかもね。
うん。もちろん使ってみなきゃわからないし、フェッチで持って来られるからスタンダードでは使われるだろうけど、それ以上は難しいと思う。それより、これだよこれ。
彼女はスマートフォンを僕との間に差し出し、画面を見せてくれた。今回のセットの商業的な目玉、プレミアム神話レア土地が並んでいる。僕はコレクターにはほど遠いし、可処分所得的にもこういうカードを集める能力はない。にもかかわらずそのフルアートの土地は魅力的だった。プロモカードで度重なるマイナーチェンジを続けてデザインを洗練させてきたフルアートカードの、ひとつの集大成と言うべき作品群だ。
これって封入率どれぐらいなんだっけ。
神話レアのフォイルよりちょっと多いぐらいって話だけどね。神話レアのフォイルの封入率は……。
言いながら彼女はスマートフォンを手にとって検索を始めた。……1ボックスあたりの期待値が 0.44 枚っていうのが出てきたな(http://shimonkinonly.diarynote.jp/201508311046253470/)。
多くない??
そうだよねえ。これだとレアのフォイルがボックスから4枚近く出る計算になるもんね。
彼女は再び検索した。大体1カートンに1〜2枚程度って言ってるひともいる(http://81428.diarynote.jp/201509011209333839/)。カートンって何ボックスだっけ?
6ボックス。
……だとすると、これぐらいが妥当な気がするなあ。
だよね。
わたしの感覚だと、ボックスあたりレア以上のフォイルが大体1枚は入ってて、運がいいと2枚って感じがする。そのうち 1/8 が神話だとすると、6ボックスあればまあ1枚か2枚ぐらいになるよね。
彼女はちょっとうつむいて頬に指を当てると、少し考えてから、顔を上げて言った。
ここまで来たら、どうしてその割合になるのか、大雑把にでも確率を推定してみたいな。
うーん。何パックに一枚フォイルが入ってるかは統計的にしか知りようがないから、考えるだけで推定しようとするとわりと不毛なことになっちゃう気もするけど。
じゃあ、一歩戻って、フォイルが入ってたとしたら、そのフォイルのレアリティの出現度合いはどうあるべきか、だったらどう?
それだったらまだできるかもね。
よし。
彼女は小さくうなずいて、そして続けた。
「単純に考えれば、パック内の封入比率とおんなじであってほしいよね。コモンが 11/16、アンコモンが 3/16、レアと神話レアが 1/16、基本土地が 1/16。」
これはおおむね妥当だと思う。
「でも、コモンとアンコモンって、フォイルのアンカットシートには基本土地も一緒に刷られてるよね」
「あれ、そうなんだっけ?」
トーナメントのサイドイベントの賞品などで時折登場するアンカットシートはレア/神話レアのものが多く、コモンやアンコモンのアンカットシートは中々見られないが、それでも皆無ではない。
「そういえば、前ラヴニカへの帰還のアンコモンのフォイルのアンカットシートが海外のオークションに出てたよね。あれも基本土地が入ってたんだったっけか」
言うなり彼女はスマートフォンで検索を始め、すぐに目的の画像に到達した。やはりそうだった。11x11 枚のアンカットシートに、40 種類のラヴニカへの帰還のアンコモンと基本土地5種1枚ずつがそれぞれ入り混じった配置で2回ずつ割り付けられ、下の方は実に 31 枚分のブランク(フィラー)が並んでいる奇妙なシートだ。
他にも、僕が以前ネットで見たことがあるエルドラージ覚醒のコモンフォイルのアンカットシートには、やはり基本土地が散らされて挿入されていた。散らされているということは、単に同時に刷っているだけではなくて、ブースターに挿入されるときも同じスロットに入っていると考えるべきだろう。
「ん、でもこれでちょっと真実に近づいたかも。さっきの比率だとレア/神話レアとおんなじだから、ボックスあたり1〜2枚ってことになっちゃって、それだといくらなんでも少ない気がしてたから。」
これが一般的だとすると、コモンとアンコモンのスロットのうちいくらかは基本土地が入っていることになる。サンプルがひとつずつしかないが、とりあえずそれを採用するならコモンの 20/121、アンコモンの 1/9 が基本土地だ。20/121 はさすがに細かくなってしまうのでここは 1/6 で近似する。
「それとは別に、基本土地だけのアンカットシートがあると思う?」 僕は訊いた。これが無いなら分母も減らさなければならない。
「ここはあるってことで行きたいんだよね。今後の論旨にも影響するので」
よくわからないが、ではあるということにして、その前提でもう一度計算してみる。コモンは (5/6)*(11/16) だから 55/96。アンコモンは (8/9)*(3/16) で 16/96。基本土地は (1/6)*(11/16)+(1/9)*(3/16)+1/16 = 19/96。残りのレア/神話レアは 6/96 となる、ので計算は合っていそうだ。神話レアはこの 1/8 なのだから、1/16*8 = 1/128。フォイルのうち 128 枚に1枚が神話レア。
まあ、元にした仮定を考えれば 16*8 だから 1/128 に決まっているのだが。
「それで、ここからはわたしの仮説」
彼女はわずかに座り直した。テーブルの下でレインブーツの靴底がタイルにこすれるぎゅっという音がした。
いや、ここまでも全部仮説だぜ、という科白を僕は飲み込む。
……えへん。
彼女は芝居がかった咳払いをした。今回のプレミアム土地は基本土地のシートに入るんじゃないかな。
どうしてそう思う。
神話レアのフォイルよりちょっと出やすいぐらい、って情報が出てるでしょ。たぶんそれって1枚あたりじゃないと思うんだよね。だとすれば、アンカットシート的な意味での封入率は同じで、種類が 25 種類ある分 15 種類である神話レアよりちょっと出やすい。次のセットでも 20 種類だっていうから、多分小型セットだから神話レアは 10 種類で、やっぱりそれよりは出やすい。……ってことなんじゃないかなあ。
結構いい線かもね。でも、必ずしも基本土地のシートじゃなくてもいいよね、それだと。
それはそう。そうなんだけど、じゃあ余った部分どうするのかなっていうのがちょっとあって。121 枚ほぼびっしり埋まってないとこの計算成り立たなくなっちゃうので、残りは基本土地で埋まってる方が都合がいいのです。
なるほど。
「というわけでそれで計算すると、……かなり丸めてるから細かい誤差はあるけど、」 言いながら彼女は式を書きつけた。
(1/128)*(25/15) = 5/384 ≒ 1/77
「……普通にもっともらしいなこれ」
「……だよね」
それで、また戻って。これはフォイルが入ってた場合の出現率だから、全体に対する封入率を出すには、何パックに一枚フォイルが入ってるのかを推定しなくちゃならない。
「1ボックスに一枚ぐらいはレア/神話レアのフォイルが入ってるとすると、1/16 って仮定だと2パックに一枚ぐらいって計算になる」
「んー。32 と、4パックだから、期待値が 1.125 か。」
彼女は顔をしかめた。「それはそんなものかも知れないけど、1ボックス剥いてフォイルが 18 枚出るのはさすがに多すぎる気がするなー」
たしかにそうだ。個人的な感覚では昔よりフォイルは出やすくなっている気はするのだが、それにしても 1/2 までは行かないようにも思う。
でも、シールドで3枚フォイルを引くと考えると、まあそれぐらい入ってそうな気もしない?
僕が訊くと彼女は苦笑いを浮かべて応じた。そうかもしれない。人間っていいかげんなもんだねえ。
まあじゃあ気前よく 1/2 ということにしまして。
しましょう。
「1/154」
強引な推定を進めて、ひとまずたどり着いた数。154 パックに1枚だから、およそ 4.3 ボックスに1枚というところか。なんとなくもっともらしい確率に思えるのは、たぶん僕たちが長々と考えたり計算してきたりしたからだろう。
そしてもちろん、ここまでの計算には改善の余地がある。ひとつは最初に仮定したフォイルが入っていた場合の各レアリティの出現率。もうひとつは、何パックに1枚フォイルが入っているかの割合。統計的にある程度以上信頼できる数を割り出そうと思えばかなりのパックを剥かなければならないだろうが、だいたいの割合でいいということであれば 20 ボックスぐらいでそれなりの精度にはなると思う。とはいえ、ショップはたとえそんな分析をしたとしても決して結果は教えてくれないだろうし、さすがに個人で買えるような数ではない。
「うん、ここまでかな」
彼女は満足げな笑みを浮かべて小さくうなずくと、椅子を小さく引いてバッグにメモやボールペンをしまいはじめた。
あれ、もう帰るの。
今日はね。予定があって。
あっさりと言うと、すっと立ち上がった。それから座っている僕をまっすぐ見下ろして、口を開きかけてからちょっとためらって、聞いてきた。
——今度、新入り連れてきてもいいかな。会社の後輩なんだけど。
僕は何故そんなことをわざわざ聞かれるのかよくわからなかった。いいよもちろん。なんで?
いちおう聞いといたほうがいいと思って。
奴らには聞いたの。
オオジマくんは聞いた。カナイくんはこれから。
ふうん。
じゃあね。
彼女は片手をちらっとだけ挙げると、踵をかえしてデュエルスペースの出口の方へ歩き出した。僕はそれを座ったままぼんやりと見送った。
歩み去る靴音が妙に大きく聞こえた。
--
いくつか補足しておきたいこともあるのだけど、眠いので後日追記する予定。
--
以下追記(2015-09-07)
前回も書きましたが、当ブログの「ポエム」というカテゴリにあるエントリは基本的に筆者の妄想です。マジックに関することでは大きな嘘は書いていないつもりですが、内容の保証はしかねます。この手の題材だと毎度書くべきですね、たぶん。
さっそくコメント欄でひとつ情報をいただいてまして、フォイル(プレミアムカード)の封入率は「67 枚に1枚の割合」なのだそうです。これだとおおむね 4.2 パックに1枚というところになります。そのうちレア/神話レアの占有率が 1/16 だとすると少し少なすぎる気がするので、おそらくどこかで仮定が間違っているのでしょう。たぶんその 1/16 というところが違うのだと思いますが、そこはまとまった数を剥かないと推定しようのない数字なので当方ではこれ以上はなんとも。
というわけで、皆さんもご自分で封入率を妄想してみるといろいろ面白いと思います。それで何らかの数値に辿り着かれたらちょっと DN に書いたりしていただくと、個人的には楽しいかなあと。
彼女がスマートフォンを見ながら言った。
「え、しょっぱいかな、あれ——」
僕は言ってからあれの適切な呼び名が決まっていないことに気付いた。「——あれ、なんて呼べばいいんだろう。三枚目ランド?」
きみほんとネーミングセンス悪いよね。
彼女に一点の緩みもない真顔で言われてさすがに僕もなにか悪いことをしたような気に一瞬なった。「……三枚目だけにね」
「やかましい」
……まあ、1ターン目と2ターン目にはほぼタップインなわけだからテンポは悪いか。基本地形とフェッチランドをある程度採用してないと3ターン目4ターン目でも全然タップインするし、そう考えるとかなり厳しいかもね。
うん。もちろん使ってみなきゃわからないし、フェッチで持って来られるからスタンダードでは使われるだろうけど、それ以上は難しいと思う。それより、これだよこれ。
彼女はスマートフォンを僕との間に差し出し、画面を見せてくれた。今回のセットの商業的な目玉、プレミアム神話レア土地が並んでいる。僕はコレクターにはほど遠いし、可処分所得的にもこういうカードを集める能力はない。にもかかわらずそのフルアートの土地は魅力的だった。プロモカードで度重なるマイナーチェンジを続けてデザインを洗練させてきたフルアートカードの、ひとつの集大成と言うべき作品群だ。
これって封入率どれぐらいなんだっけ。
神話レアのフォイルよりちょっと多いぐらいって話だけどね。神話レアのフォイルの封入率は……。
言いながら彼女はスマートフォンを手にとって検索を始めた。……1ボックスあたりの期待値が 0.44 枚っていうのが出てきたな(http://shimonkinonly.diarynote.jp/201508311046253470/)。
多くない??
そうだよねえ。これだとレアのフォイルがボックスから4枚近く出る計算になるもんね。
彼女は再び検索した。大体1カートンに1〜2枚程度って言ってるひともいる(http://81428.diarynote.jp/201509011209333839/)。カートンって何ボックスだっけ?
6ボックス。
……だとすると、これぐらいが妥当な気がするなあ。
だよね。
わたしの感覚だと、ボックスあたりレア以上のフォイルが大体1枚は入ってて、運がいいと2枚って感じがする。そのうち 1/8 が神話だとすると、6ボックスあればまあ1枚か2枚ぐらいになるよね。
彼女はちょっとうつむいて頬に指を当てると、少し考えてから、顔を上げて言った。
ここまで来たら、どうしてその割合になるのか、大雑把にでも確率を推定してみたいな。
うーん。何パックに一枚フォイルが入ってるかは統計的にしか知りようがないから、考えるだけで推定しようとするとわりと不毛なことになっちゃう気もするけど。
じゃあ、一歩戻って、フォイルが入ってたとしたら、そのフォイルのレアリティの出現度合いはどうあるべきか、だったらどう?
それだったらまだできるかもね。
よし。
彼女は小さくうなずいて、そして続けた。
「単純に考えれば、パック内の封入比率とおんなじであってほしいよね。コモンが 11/16、アンコモンが 3/16、レアと神話レアが 1/16、基本土地が 1/16。」
これはおおむね妥当だと思う。
「でも、コモンとアンコモンって、フォイルのアンカットシートには基本土地も一緒に刷られてるよね」
「あれ、そうなんだっけ?」
トーナメントのサイドイベントの賞品などで時折登場するアンカットシートはレア/神話レアのものが多く、コモンやアンコモンのアンカットシートは中々見られないが、それでも皆無ではない。
「そういえば、前ラヴニカへの帰還のアンコモンのフォイルのアンカットシートが海外のオークションに出てたよね。あれも基本土地が入ってたんだったっけか」
言うなり彼女はスマートフォンで検索を始め、すぐに目的の画像に到達した。やはりそうだった。11x11 枚のアンカットシートに、40 種類のラヴニカへの帰還のアンコモンと基本土地5種1枚ずつがそれぞれ入り混じった配置で2回ずつ割り付けられ、下の方は実に 31 枚分のブランク(フィラー)が並んでいる奇妙なシートだ。
他にも、僕が以前ネットで見たことがあるエルドラージ覚醒のコモンフォイルのアンカットシートには、やはり基本土地が散らされて挿入されていた。散らされているということは、単に同時に刷っているだけではなくて、ブースターに挿入されるときも同じスロットに入っていると考えるべきだろう。
「ん、でもこれでちょっと真実に近づいたかも。さっきの比率だとレア/神話レアとおんなじだから、ボックスあたり1〜2枚ってことになっちゃって、それだといくらなんでも少ない気がしてたから。」
これが一般的だとすると、コモンとアンコモンのスロットのうちいくらかは基本土地が入っていることになる。サンプルがひとつずつしかないが、とりあえずそれを採用するならコモンの 20/121、アンコモンの 1/9 が基本土地だ。20/121 はさすがに細かくなってしまうのでここは 1/6 で近似する。
「それとは別に、基本土地だけのアンカットシートがあると思う?」 僕は訊いた。これが無いなら分母も減らさなければならない。
「ここはあるってことで行きたいんだよね。今後の論旨にも影響するので」
よくわからないが、ではあるということにして、その前提でもう一度計算してみる。コモンは (5/6)*(11/16) だから 55/96。アンコモンは (8/9)*(3/16) で 16/96。基本土地は (1/6)*(11/16)+(1/9)*(3/16)+1/16 = 19/96。残りのレア/神話レアは 6/96 となる、ので計算は合っていそうだ。神話レアはこの 1/8 なのだから、1/16*8 = 1/128。フォイルのうち 128 枚に1枚が神話レア。
まあ、元にした仮定を考えれば 16*8 だから 1/128 に決まっているのだが。
「それで、ここからはわたしの仮説」
彼女はわずかに座り直した。テーブルの下でレインブーツの靴底がタイルにこすれるぎゅっという音がした。
いや、ここまでも全部仮説だぜ、という科白を僕は飲み込む。
……えへん。
彼女は芝居がかった咳払いをした。今回のプレミアム土地は基本土地のシートに入るんじゃないかな。
どうしてそう思う。
神話レアのフォイルよりちょっと出やすいぐらい、って情報が出てるでしょ。たぶんそれって1枚あたりじゃないと思うんだよね。だとすれば、アンカットシート的な意味での封入率は同じで、種類が 25 種類ある分 15 種類である神話レアよりちょっと出やすい。次のセットでも 20 種類だっていうから、多分小型セットだから神話レアは 10 種類で、やっぱりそれよりは出やすい。……ってことなんじゃないかなあ。
結構いい線かもね。でも、必ずしも基本土地のシートじゃなくてもいいよね、それだと。
それはそう。そうなんだけど、じゃあ余った部分どうするのかなっていうのがちょっとあって。121 枚ほぼびっしり埋まってないとこの計算成り立たなくなっちゃうので、残りは基本土地で埋まってる方が都合がいいのです。
なるほど。
「というわけでそれで計算すると、……かなり丸めてるから細かい誤差はあるけど、」 言いながら彼女は式を書きつけた。
(1/128)*(25/15) = 5/384 ≒ 1/77
「……普通にもっともらしいなこれ」
「……だよね」
それで、また戻って。これはフォイルが入ってた場合の出現率だから、全体に対する封入率を出すには、何パックに一枚フォイルが入ってるのかを推定しなくちゃならない。
「1ボックスに一枚ぐらいはレア/神話レアのフォイルが入ってるとすると、1/16 って仮定だと2パックに一枚ぐらいって計算になる」
「んー。32 と、4パックだから、期待値が 1.125 か。」
彼女は顔をしかめた。「それはそんなものかも知れないけど、1ボックス剥いてフォイルが 18 枚出るのはさすがに多すぎる気がするなー」
たしかにそうだ。個人的な感覚では昔よりフォイルは出やすくなっている気はするのだが、それにしても 1/2 までは行かないようにも思う。
でも、シールドで3枚フォイルを引くと考えると、まあそれぐらい入ってそうな気もしない?
僕が訊くと彼女は苦笑いを浮かべて応じた。そうかもしれない。人間っていいかげんなもんだねえ。
まあじゃあ気前よく 1/2 ということにしまして。
しましょう。
「1/154」
強引な推定を進めて、ひとまずたどり着いた数。154 パックに1枚だから、およそ 4.3 ボックスに1枚というところか。なんとなくもっともらしい確率に思えるのは、たぶん僕たちが長々と考えたり計算してきたりしたからだろう。
そしてもちろん、ここまでの計算には改善の余地がある。ひとつは最初に仮定したフォイルが入っていた場合の各レアリティの出現率。もうひとつは、何パックに1枚フォイルが入っているかの割合。統計的にある程度以上信頼できる数を割り出そうと思えばかなりのパックを剥かなければならないだろうが、だいたいの割合でいいということであれば 20 ボックスぐらいでそれなりの精度にはなると思う。とはいえ、ショップはたとえそんな分析をしたとしても決して結果は教えてくれないだろうし、さすがに個人で買えるような数ではない。
「うん、ここまでかな」
彼女は満足げな笑みを浮かべて小さくうなずくと、椅子を小さく引いてバッグにメモやボールペンをしまいはじめた。
あれ、もう帰るの。
今日はね。予定があって。
あっさりと言うと、すっと立ち上がった。それから座っている僕をまっすぐ見下ろして、口を開きかけてからちょっとためらって、聞いてきた。
——今度、新入り連れてきてもいいかな。会社の後輩なんだけど。
僕は何故そんなことをわざわざ聞かれるのかよくわからなかった。いいよもちろん。なんで?
いちおう聞いといたほうがいいと思って。
奴らには聞いたの。
オオジマくんは聞いた。カナイくんはこれから。
ふうん。
じゃあね。
彼女は片手をちらっとだけ挙げると、踵をかえしてデュエルスペースの出口の方へ歩き出した。僕はそれを座ったままぼんやりと見送った。
歩み去る靴音が妙に大きく聞こえた。
--
いくつか補足しておきたいこともあるのだけど、眠いので後日追記する予定。
--
以下追記(2015-09-07)
前回も書きましたが、当ブログの「ポエム」というカテゴリにあるエントリは基本的に筆者の妄想です。マジックに関することでは大きな嘘は書いていないつもりですが、内容の保証はしかねます。この手の題材だと毎度書くべきですね、たぶん。
さっそくコメント欄でひとつ情報をいただいてまして、フォイル(プレミアムカード)の封入率は「67 枚に1枚の割合」なのだそうです。これだとおおむね 4.2 パックに1枚というところになります。そのうちレア/神話レアの占有率が 1/16 だとすると少し少なすぎる気がするので、おそらくどこかで仮定が間違っているのでしょう。たぶんその 1/16 というところが違うのだと思いますが、そこはまとまった数を剥かないと推定しようのない数字なので当方ではこれ以上はなんとも。
というわけで、皆さんもご自分で封入率を妄想してみるといろいろ面白いと思います。それで何らかの数値に辿り着かれたらちょっと DN に書いたりしていただくと、個人的には楽しいかなあと。
コメント
パックの裏面に書いてあります