あいつは無敵だろうよ
2014年1月30日 ポエム「圧倒的じゃないですか」
後輩が言った。
何の話かはだいたい見当がついていたがあえて応じる。なにが。
波ですよ。前イカデッキ組んでたじゃないですか。《砂イカ》を《魂の鋳造所》に刻印する奴。エンドカード来ちゃいましたよ。
イカは含まれてないんだっつうの。
えっ。後輩は慌ててスマートフォンを操作し、驚くほど手際よく《圧倒的な波》のカードテキストを表示させた。
クラーケン、リバイアサン、タコ、海蛇以外のすべてのクリーチャーをオーナーの手札に戻す。
「ほんとだ……」
「圧倒的な波の前にはイカも踏みとどまれんのだ」
僕はもっともらしい(けど意味のない)ことを言った。
「そもそもその地点は《ウーラの寺院の探索》の時点で通過してるんだよ」
ワールドウェイクが発売された時、僕は評価も定まらないうちに箱買いするという自分の経済力を考えれば思い切った買い物をした。購入対象としては悪くなかったと思うが結果的にはジェイスも迫害者も1枚も引かないという引きの弱さを発揮した挙げ句、通常のレアでダブったのが《ウーラの寺院の探索》で、神話レアでダブったのが《目覚めし深海、レクシャル》だった。これは寺院デッキを組めという天啓に違いないと思った。そうでも思わないとやっていられなかったからだ。
《ウーラの寺院の探索》で挙げられている4つのクリーチャータイプは《圧倒的な波》と全部同じだ。僕もその中にはイカが含まれてるとてっきり思い込んでいた。
「でも、やっぱこの並びだとイカも入ってるような気がするよな。おれだけじゃなくてよかった」
なんなんですかね。クラーケンをイカって認識しちゃうんですかね。
後輩は少し考え込んだが、結局そのまま諦めたらしく関係ないことを訊いてきた。ところで、通過してるってことは、つまりデッキを組もうとしたりした的な。
した。ぬか喜びだったね。
いや待ってください。後輩は半ば笑いながら僕をさえぎる。寺院デッキにはイカ入るんですか。
入らないだろ、寺院の条件になってないんだから。
あーもうめんどくさいなこのひと。じゃあ寺院の条件になってるクリーチャーに含まれてたら入るんですか、イカは。
「それはまた別問題だよ」
ですよね。
というより、そもそも寺院デッキというのが成立するのかどうかが甚だ疑問だ。単純にクリーチャーが数多く必要だし、条件を満たした時にただ出しできるクリーチャーも入っていなければならない。つまり条件となるタイプのクリーチャーを詰め込めば理屈の上ではいいわけだが、その4つのタイプのクリーチャーは全部かき集めても50種類に満たないのだ。
「でも4マナってあのクリーチャータイプ群の中に混じったら軽い部類だから、入る余地はあるな」
え、《クラーケンの幼子》とか居るじゃないですか。
あいつは例外中の例外。むしろあいつしか居ないんだ。Xマナの奴を抜かせば、つぎいきなり4マナだからね。
4マナも 3/3 バニラの《大ダコ》はむしろ優秀で、《クーケムッサの大海蛇》《夢繰り》の島作っちゃうコンビに《日々を喰うもの》と並ばれるとため息のひとつも出る。さらに大物になると今度はタップインしたりアンタップに法外なコストがかかったりする。マナ・コスト以上に「重い」印象は否めない。
「なにも考えずに詰め込んだら、まあ万人の万人に対する闘争って感じのデッキになるよな」
僕が言うと後輩は眉ひとつ動かさずに応じた。「わかりづらいシケギャグって最悪ですよね」
「………………。」
僕は反撃すべく言葉を探したがなにも浮かばなかった。ただひとつの揚げ足取りを除いては。
……おまえさっき《砂イカ》って言ったよな。
言いましたっけ。
砂イカじゃなくて《入り海のイカ》な。砂イカは《琥珀の牢》みたいな奴。入り海のイカは無敵。
はいはい。
後輩は苦笑しながらひらひらと手を振った。もう間違えないようにします。
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これでやっと月に3本。こんなのでも結構時間かかってるし、週に1本ペースは自分には無理だということがわかりました。
イソギンチャクが刷られたんだからそろそろイカも刷られていい頃だと思っているのですが。
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