冷めた判断を押し流す
2013年3月9日 ポエム「すっかり勘違いしてた」
彼女が言い出した。「ドラゴンの迷路って、別にエクスパンション名伏せてたわけじゃないよね」
「たぶん違う」
僕は肯いた。過去2年ブロックの最後のセットは名前がある種のネタばれになっていて、特に一昨年の新たなるファイレクシアの時はぎりぎりまでセット名は隠されていたが、“ドラゴンの迷路”にはネタばれ要素はないし、セット名発表のタイミングも通常通りだ。
なんか勝手に伏せてるんだと思ってた、と彼女は続けた。それで伏せられてる前提でいろいろ考えてた。
どんなこと。
今となっては今更だけど。
完全に後出しになっていることもわかっているけど、と予防線まで張った上で彼女は続ける。ギルド同士がまた潰しあうって予想してたんだよね。まあ、それ自体もすごく予想外の展開ってわけでもなかったとは思うけど。
どうして?
エクスパンション名がネタばれになるのって、かなり限られてるでしょ。まして10個のギルドが絡んだ話だから、それでネタばれになる展開ってもうギルド全部が巻き込まれる事件しかないじゃない。そうするとまあ、ギルド大統一か、ギルド戦争か、ラヴニカ滅亡か、そんな感じ。その中ではギルド戦争がやっぱり一番ありそうだよね。
たしかに。僕は肯く。
でね、エクスパンション名もちゃんと考えてたんだよ。
なんていうの。
大会戦。Grand Melee。
かすかに恥ずかしそうに彼女は言った。最近見ないけど、古いカードの名前をエクスパンション名にするのって結構よくあるパターンだよね。アポカリプスとか、トーメントとか、オンスロートとか。そののりで戦争っぽいネーミングだとこれかなと。
いいね。エクスパンション名まで考えてるのは質の高い妄想だ。
たしか全部のクリーチャーに攻撃とブロックを強制するんだよね。当たり前だけど、カードの効果ともイメージがかみ合ってる。
「でも、ラヴニカにはちょっとそぐわないかも知れないね、大会戦」 僕は言ってみた。
うーん、それはそうなんだよ。
彼女は口振りとは裏腹に笑みを浮かべている。ディミーアとか全部暗殺でかたつけそうな感じだし、イゼットが絡んだらそこらじゅう大爆発なんでしょ。よく知らないけど。
すごい偏見だらけだ、と僕は思う。
まあそれにそもそも前提が間違ってたからね。
彼女の笑みが少し自嘲の色を帯びた。
エクスパンション名が発表されて、あれ、全然予想と違った、じゃあなんでこれ伏せてたんだろうって思って、そのちょっと後に例のギルド門の暗号の話が出てきて、やっぱりつぶし合いになるんだってわかって、初めて自分が間違ってたってわかったんだよ。人に話さなくてよかった。
彼女がちらりと僕のほうを見る。一瞬目が合うがすぐに逸らされ、もう一度こちらを見る。
きみは人に数えない。
僕は肩をすくめて肯く。存じております。
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定期追記。このシリーズは「傘をひらいて、空を」というブログ(http://d.hatena.ne.jp/kasawo/)の表層をかなりがっつりパクっています。このシリーズが気に入った方がもしいらしたら、是非リンク先もご覧になってみてください。
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