翻訳:試合に負けるための10の方法(後編)/パウロ・ヴィトフ・ダモ・ダ・ホサ
2011年8月13日 翻訳 コメント (8)というわけで後編です。さすがに一週間かかってしまった。
原文:PV’s Playhouse - How to Lose a Match in 10 Plays
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-how-to-lose-a-match-in-10-plays/
前編はこちら
http://drk2718.diarynote.jp/201108060211193316/
#5 ディテイルに注意を払わない
マジックでは、大半のゲームの敗因は「大きな全体の絵」(訳注:#4 を参照)の中で失敗することにありますが、その中には小さな失敗しやすいポイントが数多くあります。特定の状況にならなければ決して大事に至らなかっただろう誤りというのは多いのです。私が考えるに、もっともありがちで、それでいてもっとも深刻な事態につながりうる細かいミスは土地に関するものです――セットランドするべき時にセットしないミスと、誤った土地をタップしてしまうミスとの2種類があります。
今や、はったりのために手札に土地を抱えておくテクニックは誰もが知っています。対戦相手にただで情報を与えたくはありませんものね。でもその一方で、自分のデッキからどんなカードをドローする可能性があるのかは常に意識していなければなりません。その土地を戦場に出しておく必要が生じるかも知れないからです。ブラッド・ネルソンが最近書いた記事で(それともリッチ・ハーゴンだったかな?)、ハワイに住む私の友人ルーカス・バーサウドと彼が対戦して、それを見ていた私が彼の勝利に対して文句をつけた、というようなくだりがありましたが、その中でブラッドが言及していないことがあります。それは、ある時点でブラッドがあえて土地をプレイせず、それが最終的に彼にとってひどいことにつながった、ということです。本当に小さなことで、普通はゲームに一切影響しないレベルでしたが、しかしその 11 枚目かそこらの土地をひとつ前のターンに出してさえいれば、彼はその場でゲームに勝てた、という瞬間があったのです――その土地をはったりのために手札に溜めておいたりせずに。私が文句をつけたのはそのことについてです。結局は彼が勝ったとはいえ。
誰もが――文字通り誰もが、どんなに素晴らしいプレイヤーであっても、こういう小さなミスを犯します。さほど重要には思えなかった決断が、しかし最終的には勝敗を左右することになるのです。
《島》2枚の代わりに《島》と《金属海の沿岸》を残して《瞬間凍結》を構えて、これなら《糾弾》を持ってるふりもできるし、と思ってたら戦闘前に《地盤の際》を使われてカウンターすら構えられなくなったのは誰でしょう?
10 枚目の土地を置いてしまったばっかりに、《精神腐敗》を打たれてスペルを2枚捨てる羽目になって、それで負けたのは誰でしょう?
打ち消し呪文を持ってたのに、相手の3枚目の《霊気の薬瓶》を、「どうせもう2枚場に出てるんだから一緒だよな?」と思って通してしまい、おかげで負けたのは誰でしょう?
3ターン目に土地が詰まって、6マナのカードをディスカードしたら、ゲームが長引いて終盤出すものがなくなって負けたのは誰でしょう?
《渦巻く知識》を打つ前に土地を置いてしまったばっかりに、3枚見た中にもっといい土地があったのに、それがプレイできなくて負けたのは誰でしょう?(これだけは私はやったことがありません――でも他のものは全部私がやりました)
指摘しておきたいのは、その決断が一見重要そうには見えないからこのようなことが起きるのだ、というわけではないということです。バタフライ効果という言葉をご存知でしょうか。蝶々の羽ばたきがハリケーンを起こすことがある、という奴です。マジックでは、まさにその通りのことが起きます。何かを無意味だと切り捨てる前に、それが本当に無意味であるかどうか、パーセント単位まで検証してみましょう。《面晶体のカニ》の能力が誘発したときに、それにスタックしてフェッチランドを起動しないようにすると(*10)、重要なスペルの代わりに土地がライブラリから墓地に落とされる確率がちょっとだけ上がります。仮にそれが 1% だけ上がるとすると、このような状況が 100 回起きたとしたら、そのうち 99 回はやってもやらなくても同じです。でも、最後の1回はプロツアー予選の決勝戦かも知れないのです!
もうひとつ、殆ど誰もやっていないプレイングがあります。赤単デッキでライブラリを「圧縮」したい時には、対戦相手の終了ステップではなく、自分のターンのアップキープに入ってからフェッチランドを起動しましょう。こうすれば、そのターン《焼尽の猛火》を上陸で打てますから、手札の《山》を、もう1枚《焼尽の猛火》を引いた時のためにとっておくことができます。殆ど影響がない? まるで無意味? 絶対にそんなことはありません。とにかく、このプレイングをしたところで失うものは3ミリ秒ぐらいしかないのだ、ということは頭に入れておいてもいいでしょう。
#6 デッキを選ぶときに、理性より感情を優先させる
数日前のことですが、ギャヴィンがツイッターで「これまでに使ったカードの中で、トーナメントでいい成績を収めた一番変なカードは何?」というお題を出していました。みんなの答えは《三つの夢》から《的外れの激怒》《死相の否命》まで様々で、なかなか楽しそうな会話だったので私も加わりたいと思いました。ところが、私は真剣勝負のトーナメントで成功を収めたときに使った“へんてこな”カードを1枚たりとも思いつくことができませんでした(13歳かそこらの頃使った、3バイ明けから 3-1-2 だった《機知の戦い》デッキを「成功」に数えなければ、の話ですが)。本当です。もちろん、1枚も無いということはないのでしょうが、とにかく思い出すことができません――もっともそれに近いのは、《夜景学院の弟子》が4枚入った「サイカトグ」デッキであるトーナメントに優勝したことですが、それにしたってデッキリストに《夜景学院の使い魔》と書くべきところを間違えてしまい、デッキに入れなければならなくなった(*11)だけなのです。
要するに、私は変なカードが入っているデッキを使うことは滅多にありませんし、使ったときは負けている、ということになります。このことに気付くまでにはそれほど時間はかかりませんでした。
今は、私は自分がもっとも強いと考えるデッキを必ず使うことにしています。もちろん、これはこれで私の「最強」観によってバイアスがかかってきます――白ウィニーはマイナス、マナランプ系もマイナス、コントロールとか驚くようなコンボはプラス、サイドボードがよければプラス、サイドボードが駄目ならマイナス、といった具合に。
私の見たところでは、多くのプレイヤーは単に他人と違ったことをしたいだけのカードをデッキに入れていながら、それが最良の選択肢だと本気で信じているふしがあります。他人と違ったことをしたい、ということ自体にはなにも悪いことはありません。でも、これだけはわかっていなければいけません。トーナメントで勝つために最善を尽くそうと考えることと、単に人と違ったことをしようとすることとは、決して両立しないのです。
「でも奇襲要素があるよ!」「誰もこのカードに対する正しいプレイングを知らないんだ」そうでしょうとも、自分を騙し続けなさい。たとえ大っぴらに認めることはできないとしても、心の奥底でどう思っているか――自分自身でデザインした、他に誰も使っていないようなカードの入ったデッキで勝てる見込みはどの程度あると考えているのかが、本当に考慮すべき要素です(*12)。もし最高のレベルで戦いたいのなら、先に書いたような欺瞞は決して自分自身に許してはならないことです。
ある時パトリック・チャピンが私に、きみの最大の強さは理性がほぼ完全に感情を制していることだと思う、と言ってくれたことがありました。それは私が感情を持っていないということではありません。『ケアベア』に登場するノーハートみたいなのを想像しないでください。私が、論理が必要とされる場面では決して感情に支配されないということです。チャピンが言うには、多くのプレイヤーはある状況に対処するために備えることができる筈なのに、判断を感情で曇らせてしまうために、プレイヤー自身の最高の能力を発揮できない。それに対して私は殆ど常に限界近くまで理性的な判断を下している、というのです。
ひとつ思うのは、私が特定のデッキに愛着を持つことがないのは大いに意味があるだろうということです。意識するしないに関わらず、それはトーナメントに持ち込むデッキを選択する上ではいいことですし、それが好成績に直結していると思います。(*13)
#7 どうサイドボードしていいかわかってない
サイドボードは、充分に練習を積んだ上で、どの試合でも何を入れて何を抜くべきか完璧に解っている、という状態が理想的です。しかし現実にはそんなことは起こり得ないということは誰もが知っています。大抵の人はサイドボードの調整に1日かそれ以下しかかけませんし、殆どの場合最後の最後に何枚か入れ替えたりすらします。プレイテストの時間を伸ばせ、とまでは言いませんが、重要なマッチアップでどういうサイドボードをするかは必ずわかっていなければなりません。
サイドボードを作る時には、抜くカードと入れたいカードの枚数の帳尻が合っているかを確かめましょう。もし合わなければさらに抜ける/入れるカードがないかを検討して、それでも駄目なら別のサイドボード候補を探しましょう。これを全てのマッチアップについて行う必要はありませんが、例えば今スタンダードのトーナメントに出るのだったら「コー・ブレイド(カウ・ブレード)」相手のサイドボードは気合いを入れて考えるべきです。ラウンド1から当たったとしても全く文句は言えませんから。
プロツアー・ハリウッドの準々決勝で、私は「フェアリー」デッキを使っていて、「緑黒エルフ」を駆る中村修平と対戦しました。前日に中村のデッキリストが公開されていたにもかかわらず、私はサイドアウトするべき最後の1枚のカードがわかりませんでした。確か 10 枚ほど入れたいカードがあったのですが、9枚しか抜けるカードがないのです。こんな場合どうすればいいのでしょうか? どれほどプレイテストをすれば、あるカードが2枚必要かそれとも3枚必要かわかるのでしょうか? 結局、私は自分で考えてみて、あらゆる人に訊いてみて、さらに考えて、なお結論を出せませんでした。私はとりあえず寝ることにしました。翌朝起きて、また考えて、朝食をとって、なお考えて、それでもわかりませんでした。1ゲーム目が終わると、私はサイドボードを前に苦しむ羽目になりました。テッド・ナットソンはこの場面をカバレッジ(*14)でこう書いています。「パウロはサイドボードの選択に数分を費やした。昨夜にはすでにとり得る選択肢を頭の中で何度も検討しただろうにもかかわらず。」ええ、確かに検討はしたんですが……。とうとう私は最後の一枚を殆ど無作為に選びました。その一枚が結果に影響を及ぼしたかって? 知りたくもありません。このお話の教訓は、サイドボードを決める時は必ず出入りの枚数を合わせておきましょう、ということです!
最後にサイドボーディングのコツをいくつか書いときます:
・《定業》みたいなカードを抜くのは殆どの場合間違いです。
・先手と後手ではサイドボードを変えるべき場合がしばしばあります。
・土地をサイドアウトしても構いません。特に《地盤の際》のような、マナが主目的ではない土地については。
・リミテッドの試合ではサイドボード時に色を変えても構いません。
#8 プレイテストが内輪メタになっている(*15)
プレイテストのためのグループを作ることには様々なメリットがあります。より質の高いテスト時間が持てますし、違った視点を取り入れられますし、他のプレイヤーとのつながりも生じます。しかし、閉じたグループ内でテストをしていると内輪メタの問題は起こりがちです。よくあるのは、誰かが組んだデッキが、一般にトーナメントで広く使われていてプレイテストの対象とすべきものと細かいところで違っていて、優れていたり劣っていたりすることです。そうすると、マッチアップで重要な点は何か、あるいはどのデッキがどのデッキに勝つのかといったことについて間違った結論に辿り着いてしまいます。それはデッキ選択の誤りや敗北の原因となります。
それは大抵そこまで大事にはならないのですが、時には悲惨なことになることもあります。プロツアー・サンディエゴに向けての調整中、私たちのチームの「ナヤ」デッキはプレイテストでは「ジャンド」デッキを圧倒していました。しかしそれは私が作ったテスト用の「ジャンド」が弱かったからでした。実際のプロツアーで見られた「ジャンド」はかなり違うヴァージョンで、もっと強力で、私たちが思っていたよりはずっと際どい相性になっていました。プロツアー・名古屋では、私たちの白単には必ず《刃砦の英雄》が4枚入っていて、絶対に4枚が正解だと確信していました。あらゆるデッキに対して勝ちを決めてくれるカードだからです。しかしふたを開けてみると、どのデッキを見ても2~3枚しか入っていません。私たちは恐ろしくなりました。プレイテスト中に(訳注:4枚入っている)《刃砦の英雄》に沈められて、検討するに値しないと思っていたデッキが、誰も4枚入れていない環境では浮上してきているかも知れません。しかし、私たちにどうすることができたでしょう? 自分たちの方が正しいことはわかっているのに、他のプレイヤーたちが同じ結論に辿り着けないのです。
私は、このような時は、とにかく自分たちが一番強いと考えているヴァージョンを相手に想定するのがよいと考えています(そうすればそれより弱いヴァージョンにも多分勝てるでしょうから)。しかし、違うヴァージョンを使っているプレイヤーと対戦することもあり得るということは頭に入れておいたほうがいいでしょう。
もうひとつ内輪メタで起こりがちなことは、あるデッキの評価が本来よりも高く、あるいは低くなり過ぎてしまうことです。もしあなたの属するグループのメンバー全員が「フェアリー」を大好きで、フェアリーが最強だと考えていたら、「《目覚ましヒバリ》」デッキはあまり好い選択肢には思えないでしょう。すると「緑黒エルフ」のような中速デッキが強そうに見えてきます。それを受けて「フェアリー」を中速デッキに強い構造に作り変えます。こういった過程を経て、最後には最強デッキが完成します。ただし、そのデッキが最強なのはプレイヤー全員があなたたちと仮定を共有している場合だけです。例えば多くのプレイヤーが「フェアリー」はそれほど強くないと考えていれば、「目覚ましヒバリ」が相対的に浮上します。すると「目覚ましヒバリ」に勝てない「緑黒エルフ」は数を減らします。そうなってしまうと、中速デッキを相手に調整してきたことは無駄になってしまいます。もちろん、現実に起きることはもっと複雑です。しかし、これについては、一番強いと考えるものに備えるよりも、一番多く居そうだと思うものに備えるべきです。
まとめると、デッキのヴァージョンについては、自分が最強だと考えるヴァージョンに備えるべきで、デッキ分布については、自分の考えよりも“民衆の意見”を参考にすべきです。
#9 負けをなくせばいい時に勝ちに向かうプレイングをしてしまう
負けそうな時というのは、集中するものです。逆に勝ちそうな時は、気が緩みます。少なくとも私はそうですし、これについて話をした大半のプレイヤーもそうでした。もし勝ちそうな状況にある時には、その状況が崩れないように注意する必要があります。そのためには、何があると負けなのかを考えて、それを回避するようにプレイすることです。有利であればあるほど、回避できる余地は増えます。私の場合有利になるほどひどいプレイが増えてしまうのですが。
私たちがシンガポールでプレイテストをしていたとき、とあるプレイヤー(特に名を秘す)が白ウィニーに対して圧倒的な優位に立っていました。しかし彼は毒カウンターを9個受けていて、対戦相手は《墨蛾の生息地》をコントロールしていました。相手の手札は空で、彼はブロッカーを1体立てていました。そこで匿名プレイヤー氏は忠誠カウンターが3個乗っている《解放された者、カーン》を起動して……対戦相手にディスカードさせたのです! 対戦相手は当然《急送》をトップデッキして、ブロッカーをタップし、《墨蛾の生息地》で彼を毒殺しました。私が「当然」と書くのは、前述したとおり(訳注:#3 参照)、悪いプレイはその報いを受けるべきだからです。
匿名プレイヤー氏が理解していなかったのは、あれだけ圧倒的に場を支配していたのですから、《カーン》をなげうつことには何の問題もなかったということです。それで《生息地》を追放してしまえば、もはや負けようがない盤面でした。もちろん、負けそうな状況なら、1枚のカードから得られるリソースを最大にしなければなりません。でも、圧倒的に有利なら、確実に死ななくなるプレイングをすることです! このためには、カードからのさらなるリソースが必要か必要でないのかを判断できるようになることが大切です。以下のような状況を考えてみましょう:
あなたのライフは5点で、青マナ1個だけを立てています。手札はフェッチランド、《渦まく知識》《Force of Will》の3枚。対戦相手が《溶岩の斧》を唱えてきました。さあ、《渦まく知識》を打ちますか?
この問題文だけでは、正しい答えは存在しません。ゲームの状況によって正しい答えは変わってくるからです。もし次のターンに相手に止めを刺せるのなら、《渦まく知識》を打つ必要はありません――これ以上のカードは必要ないのですし、一方で死なないようにプレイすべきで、ギャンブルの必要はありません。もし逆に次のターンには負けてしまうという状況だったら、もちろん、なにか解決策が必要です! この場合は単純に《渦まく知識》を打って、青いカードともう一枚なにかを引き当てなければなりません。それで引けなかったとしたら、まあどのみち勝ち目は殆ど無かったということになります。
つまるところ、カードになにをしてもらうことが必要か、ということが問題になります。時には、少しだけ長く生き延びるためにカードを費やさなければならないときもあります。そんな時に能動的に勝ちに行くためにそのカードを費ってしまうと、それがゲームに負ける原因になることもあるのです。
#10 やりこみが足りない
これは負ける理由と言うよりは勝てない理由に該当します。「僕はプロツアー予選のトップ8でいつも負けてしまいます。なにがいけないんでしょう? トーナメントで優勝するためには、何が必要なんでしょうか?」――これは私がもっともよく受ける質問のひとつなのですが(ところでこの質問を私にするのはあまりいい人選とは言えません。プレミア・イヴェントで優勝するまでに、12 回のトップ8進出を要したのですから。)、私の答えはいつも大体同じです。あなたが勝てない理由はたぶん、確率的にはあなたは大抵負けることになってるからですよ。
なにしろトップ8には8人居て、勝てるのはひとりなのです。もしあなたがトップ8に4回残って一度も優勝できなかったとしても、特にあり得ない確率でもありませんし、世界一不運というわけでもありません。なにか特別に悪い点がなくても、ただ単に起こり得ることです。残り7人のうち6人まではあなたと全く同じことを思っているかも知れません。「でも僕があの中では一番強かったのに」? ええ、まあ他の6人もそう思ってることでしょうよ。それに、もし本当にあなたが最強で、あらゆる試合で勝率が 67% あったとしても、なお優勝できる可能性は 30% にも満たないのです。
これを乗り越えるには、とにかくたくさんプレイして、何度も何度も挑戦することです。もちろんプレイングを磨くことは乗り越える助けになるでしょうし、ひとつのゴールでもあるべきなのですが、それはそれとして好むと好まざるとに関わらずマジックには運が絡むのです。そして運の要素を乗り越えるためには、運が結果に与える影響を無視できるほどに、とにかくたくさんのトーナメントに出ることです。
それはまた、プレイミスを減らす最良の方法でもあります。もし大事な一戦でミスをして負けたら、なんらかの教訓を得られるでしょうし、何度も挑戦を続ければ、その教訓を活かす機会にも巡り会えるでしょう。
プロツアー予選に2回出て、2回とも運に恵まれなくても、それは不思議なことではありません。10回参加して、それで10回とも運が悪ければ、おめでとうございます、あなたは世界一不運な人です。でも、実際には世界一不運な人なんて居ませんし、もし居たとしてもそれがあなたである可能性は極めて低いです。
ああ、すっかり長くなってしまいました(訳注:ほんとだよ)。もちろん、ゲームの敗北につながることは他にもたくさんあります。たとえば睡眠不足みたいなことだって負ける原因にはなり得ます。この記事ではごく一般的なものを挙げたつもりです。お楽しみいただけたでしょうか。
パウロ・ヴィトフ(*16)
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ということでここまでです。長かったですね。
誤訳の指摘、あるいは自分ならこう訳すというような意見、などは全体的に歓迎します。コメント欄でどうぞ。特に脚注に挙げているところは意味がとりづらかったところです。ご教授頂ければ幸いです。
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脚注
(*10)それにスタックしてフェッチランドを起動しないようにする
これ文字通り訳してるんだけど意味がわかっていない。いや、理屈は理解できる(と思う)のだが、普通起動しないのではないか。
(*11)デッキに入れなければならなくなった
当時のルールではデッキリストと実際のデッキに齟齬がある場合はデッキリストに合うようにデッキのカードを入れ替えなければならなかった。現在は原則として実際のデッキに合うようにデッキリストを修正することとなっている。
(*12)たとえ大っぴらに~考慮すべき要素です。
原文は "Deep down, even if you do not consider it out loud, the prospect of winning with a deck of your own design, with cards no one else plays, s going to be a factor." くそ難しい。plays, の後は脱字があると思われるが(原文ではここの s 一文字だけが斜体になっている)ここでは is と考えて訳している。要するに、surprize factor なんぞという怪しげな factor ではなく、誰も使ってないカードが入ってるおまえのオリジナル・デッキの勝ち目がどんぐらいあると思うか心の中で考えてみろ、それこそが factor だ、と言いたいのだと思う。
(*13)ひとつ思うのは、~直結していると思います。
原文は "I think the fact that I am not attached to the decks in a meaningful way, consciously or not, has resulted in me choosing better decks for tournaments and, therefore, directly impacted my success." 大筋では特に難しいところはないのだが、in a meaningful way がさっぱりわからない。attached to the decks にかかるとは到底思えないので、その前の I think the fact that に無理矢理くっつけた。訳せないところを省くことは極力しないようにしているのだが、これは省いた方が綺麗にまとまるかも知れない。
(*14)カバレッジ
これ。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtgevent/pthol08/qf2
試合結果がどうなったか気になる人は読んでみよう。余談だけど coverage の発音はカヴァリッジに近いみたい。
(*15)内輪メタになっている
ここは思い切って意訳した。原文では "Your testing is inbred" だから、直訳すると「テストが近親交配になっている」になるが流石に意味が通じなさ過ぎる。というか初めて聞いた言い回しだしはっきり言って全然ぴんと来ない。一般的な言い回しなのかマジックスラングの一種なのかも不明。ちなみに競馬で言うインブリードと同じ言葉。競馬でインブリードって言う場合一般的には(以下 700 行省略)
(*16)パウロ・ヴィトフ
ポルトガル語の発音に近いらしい表記にしてみた(タイトルのところも同じ)。誰だこれって感じになる。
原文:PV’s Playhouse - How to Lose a Match in 10 Plays
http://www.channelfireball.com/articles/pvs-playhouse-how-to-lose-a-match-in-10-plays/
前編はこちら
http://drk2718.diarynote.jp/201108060211193316/
#5 ディテイルに注意を払わない
マジックでは、大半のゲームの敗因は「大きな全体の絵」(訳注:#4 を参照)の中で失敗することにありますが、その中には小さな失敗しやすいポイントが数多くあります。特定の状況にならなければ決して大事に至らなかっただろう誤りというのは多いのです。私が考えるに、もっともありがちで、それでいてもっとも深刻な事態につながりうる細かいミスは土地に関するものです――セットランドするべき時にセットしないミスと、誤った土地をタップしてしまうミスとの2種類があります。
今や、はったりのために手札に土地を抱えておくテクニックは誰もが知っています。対戦相手にただで情報を与えたくはありませんものね。でもその一方で、自分のデッキからどんなカードをドローする可能性があるのかは常に意識していなければなりません。その土地を戦場に出しておく必要が生じるかも知れないからです。ブラッド・ネルソンが最近書いた記事で(それともリッチ・ハーゴンだったかな?)、ハワイに住む私の友人ルーカス・バーサウドと彼が対戦して、それを見ていた私が彼の勝利に対して文句をつけた、というようなくだりがありましたが、その中でブラッドが言及していないことがあります。それは、ある時点でブラッドがあえて土地をプレイせず、それが最終的に彼にとってひどいことにつながった、ということです。本当に小さなことで、普通はゲームに一切影響しないレベルでしたが、しかしその 11 枚目かそこらの土地をひとつ前のターンに出してさえいれば、彼はその場でゲームに勝てた、という瞬間があったのです――その土地をはったりのために手札に溜めておいたりせずに。私が文句をつけたのはそのことについてです。結局は彼が勝ったとはいえ。
誰もが――文字通り誰もが、どんなに素晴らしいプレイヤーであっても、こういう小さなミスを犯します。さほど重要には思えなかった決断が、しかし最終的には勝敗を左右することになるのです。
《島》2枚の代わりに《島》と《金属海の沿岸》を残して《瞬間凍結》を構えて、これなら《糾弾》を持ってるふりもできるし、と思ってたら戦闘前に《地盤の際》を使われてカウンターすら構えられなくなったのは誰でしょう?
10 枚目の土地を置いてしまったばっかりに、《精神腐敗》を打たれてスペルを2枚捨てる羽目になって、それで負けたのは誰でしょう?
打ち消し呪文を持ってたのに、相手の3枚目の《霊気の薬瓶》を、「どうせもう2枚場に出てるんだから一緒だよな?」と思って通してしまい、おかげで負けたのは誰でしょう?
3ターン目に土地が詰まって、6マナのカードをディスカードしたら、ゲームが長引いて終盤出すものがなくなって負けたのは誰でしょう?
《渦巻く知識》を打つ前に土地を置いてしまったばっかりに、3枚見た中にもっといい土地があったのに、それがプレイできなくて負けたのは誰でしょう?(これだけは私はやったことがありません――でも他のものは全部私がやりました)
指摘しておきたいのは、その決断が一見重要そうには見えないからこのようなことが起きるのだ、というわけではないということです。バタフライ効果という言葉をご存知でしょうか。蝶々の羽ばたきがハリケーンを起こすことがある、という奴です。マジックでは、まさにその通りのことが起きます。何かを無意味だと切り捨てる前に、それが本当に無意味であるかどうか、パーセント単位まで検証してみましょう。《面晶体のカニ》の能力が誘発したときに、それにスタックしてフェッチランドを起動しないようにすると(*10)、重要なスペルの代わりに土地がライブラリから墓地に落とされる確率がちょっとだけ上がります。仮にそれが 1% だけ上がるとすると、このような状況が 100 回起きたとしたら、そのうち 99 回はやってもやらなくても同じです。でも、最後の1回はプロツアー予選の決勝戦かも知れないのです!
もうひとつ、殆ど誰もやっていないプレイングがあります。赤単デッキでライブラリを「圧縮」したい時には、対戦相手の終了ステップではなく、自分のターンのアップキープに入ってからフェッチランドを起動しましょう。こうすれば、そのターン《焼尽の猛火》を上陸で打てますから、手札の《山》を、もう1枚《焼尽の猛火》を引いた時のためにとっておくことができます。殆ど影響がない? まるで無意味? 絶対にそんなことはありません。とにかく、このプレイングをしたところで失うものは3ミリ秒ぐらいしかないのだ、ということは頭に入れておいてもいいでしょう。
#6 デッキを選ぶときに、理性より感情を優先させる
数日前のことですが、ギャヴィンがツイッターで「これまでに使ったカードの中で、トーナメントでいい成績を収めた一番変なカードは何?」というお題を出していました。みんなの答えは《三つの夢》から《的外れの激怒》《死相の否命》まで様々で、なかなか楽しそうな会話だったので私も加わりたいと思いました。ところが、私は真剣勝負のトーナメントで成功を収めたときに使った“へんてこな”カードを1枚たりとも思いつくことができませんでした(13歳かそこらの頃使った、3バイ明けから 3-1-2 だった《機知の戦い》デッキを「成功」に数えなければ、の話ですが)。本当です。もちろん、1枚も無いということはないのでしょうが、とにかく思い出すことができません――もっともそれに近いのは、《夜景学院の弟子》が4枚入った「サイカトグ」デッキであるトーナメントに優勝したことですが、それにしたってデッキリストに《夜景学院の使い魔》と書くべきところを間違えてしまい、デッキに入れなければならなくなった(*11)だけなのです。
要するに、私は変なカードが入っているデッキを使うことは滅多にありませんし、使ったときは負けている、ということになります。このことに気付くまでにはそれほど時間はかかりませんでした。
今は、私は自分がもっとも強いと考えるデッキを必ず使うことにしています。もちろん、これはこれで私の「最強」観によってバイアスがかかってきます――白ウィニーはマイナス、マナランプ系もマイナス、コントロールとか驚くようなコンボはプラス、サイドボードがよければプラス、サイドボードが駄目ならマイナス、といった具合に。
私の見たところでは、多くのプレイヤーは単に他人と違ったことをしたいだけのカードをデッキに入れていながら、それが最良の選択肢だと本気で信じているふしがあります。他人と違ったことをしたい、ということ自体にはなにも悪いことはありません。でも、これだけはわかっていなければいけません。トーナメントで勝つために最善を尽くそうと考えることと、単に人と違ったことをしようとすることとは、決して両立しないのです。
「でも奇襲要素があるよ!」「誰もこのカードに対する正しいプレイングを知らないんだ」そうでしょうとも、自分を騙し続けなさい。たとえ大っぴらに認めることはできないとしても、心の奥底でどう思っているか――自分自身でデザインした、他に誰も使っていないようなカードの入ったデッキで勝てる見込みはどの程度あると考えているのかが、本当に考慮すべき要素です(*12)。もし最高のレベルで戦いたいのなら、先に書いたような欺瞞は決して自分自身に許してはならないことです。
ある時パトリック・チャピンが私に、きみの最大の強さは理性がほぼ完全に感情を制していることだと思う、と言ってくれたことがありました。それは私が感情を持っていないということではありません。『ケアベア』に登場するノーハートみたいなのを想像しないでください。私が、論理が必要とされる場面では決して感情に支配されないということです。チャピンが言うには、多くのプレイヤーはある状況に対処するために備えることができる筈なのに、判断を感情で曇らせてしまうために、プレイヤー自身の最高の能力を発揮できない。それに対して私は殆ど常に限界近くまで理性的な判断を下している、というのです。
ひとつ思うのは、私が特定のデッキに愛着を持つことがないのは大いに意味があるだろうということです。意識するしないに関わらず、それはトーナメントに持ち込むデッキを選択する上ではいいことですし、それが好成績に直結していると思います。(*13)
#7 どうサイドボードしていいかわかってない
サイドボードは、充分に練習を積んだ上で、どの試合でも何を入れて何を抜くべきか完璧に解っている、という状態が理想的です。しかし現実にはそんなことは起こり得ないということは誰もが知っています。大抵の人はサイドボードの調整に1日かそれ以下しかかけませんし、殆どの場合最後の最後に何枚か入れ替えたりすらします。プレイテストの時間を伸ばせ、とまでは言いませんが、重要なマッチアップでどういうサイドボードをするかは必ずわかっていなければなりません。
サイドボードを作る時には、抜くカードと入れたいカードの枚数の帳尻が合っているかを確かめましょう。もし合わなければさらに抜ける/入れるカードがないかを検討して、それでも駄目なら別のサイドボード候補を探しましょう。これを全てのマッチアップについて行う必要はありませんが、例えば今スタンダードのトーナメントに出るのだったら「コー・ブレイド(カウ・ブレード)」相手のサイドボードは気合いを入れて考えるべきです。ラウンド1から当たったとしても全く文句は言えませんから。
プロツアー・ハリウッドの準々決勝で、私は「フェアリー」デッキを使っていて、「緑黒エルフ」を駆る中村修平と対戦しました。前日に中村のデッキリストが公開されていたにもかかわらず、私はサイドアウトするべき最後の1枚のカードがわかりませんでした。確か 10 枚ほど入れたいカードがあったのですが、9枚しか抜けるカードがないのです。こんな場合どうすればいいのでしょうか? どれほどプレイテストをすれば、あるカードが2枚必要かそれとも3枚必要かわかるのでしょうか? 結局、私は自分で考えてみて、あらゆる人に訊いてみて、さらに考えて、なお結論を出せませんでした。私はとりあえず寝ることにしました。翌朝起きて、また考えて、朝食をとって、なお考えて、それでもわかりませんでした。1ゲーム目が終わると、私はサイドボードを前に苦しむ羽目になりました。テッド・ナットソンはこの場面をカバレッジ(*14)でこう書いています。「パウロはサイドボードの選択に数分を費やした。昨夜にはすでにとり得る選択肢を頭の中で何度も検討しただろうにもかかわらず。」ええ、確かに検討はしたんですが……。とうとう私は最後の一枚を殆ど無作為に選びました。その一枚が結果に影響を及ぼしたかって? 知りたくもありません。このお話の教訓は、サイドボードを決める時は必ず出入りの枚数を合わせておきましょう、ということです!
最後にサイドボーディングのコツをいくつか書いときます:
・《定業》みたいなカードを抜くのは殆どの場合間違いです。
・先手と後手ではサイドボードを変えるべき場合がしばしばあります。
・土地をサイドアウトしても構いません。特に《地盤の際》のような、マナが主目的ではない土地については。
・リミテッドの試合ではサイドボード時に色を変えても構いません。
#8 プレイテストが内輪メタになっている(*15)
プレイテストのためのグループを作ることには様々なメリットがあります。より質の高いテスト時間が持てますし、違った視点を取り入れられますし、他のプレイヤーとのつながりも生じます。しかし、閉じたグループ内でテストをしていると内輪メタの問題は起こりがちです。よくあるのは、誰かが組んだデッキが、一般にトーナメントで広く使われていてプレイテストの対象とすべきものと細かいところで違っていて、優れていたり劣っていたりすることです。そうすると、マッチアップで重要な点は何か、あるいはどのデッキがどのデッキに勝つのかといったことについて間違った結論に辿り着いてしまいます。それはデッキ選択の誤りや敗北の原因となります。
それは大抵そこまで大事にはならないのですが、時には悲惨なことになることもあります。プロツアー・サンディエゴに向けての調整中、私たちのチームの「ナヤ」デッキはプレイテストでは「ジャンド」デッキを圧倒していました。しかしそれは私が作ったテスト用の「ジャンド」が弱かったからでした。実際のプロツアーで見られた「ジャンド」はかなり違うヴァージョンで、もっと強力で、私たちが思っていたよりはずっと際どい相性になっていました。プロツアー・名古屋では、私たちの白単には必ず《刃砦の英雄》が4枚入っていて、絶対に4枚が正解だと確信していました。あらゆるデッキに対して勝ちを決めてくれるカードだからです。しかしふたを開けてみると、どのデッキを見ても2~3枚しか入っていません。私たちは恐ろしくなりました。プレイテスト中に(訳注:4枚入っている)《刃砦の英雄》に沈められて、検討するに値しないと思っていたデッキが、誰も4枚入れていない環境では浮上してきているかも知れません。しかし、私たちにどうすることができたでしょう? 自分たちの方が正しいことはわかっているのに、他のプレイヤーたちが同じ結論に辿り着けないのです。
私は、このような時は、とにかく自分たちが一番強いと考えているヴァージョンを相手に想定するのがよいと考えています(そうすればそれより弱いヴァージョンにも多分勝てるでしょうから)。しかし、違うヴァージョンを使っているプレイヤーと対戦することもあり得るということは頭に入れておいたほうがいいでしょう。
もうひとつ内輪メタで起こりがちなことは、あるデッキの評価が本来よりも高く、あるいは低くなり過ぎてしまうことです。もしあなたの属するグループのメンバー全員が「フェアリー」を大好きで、フェアリーが最強だと考えていたら、「《目覚ましヒバリ》」デッキはあまり好い選択肢には思えないでしょう。すると「緑黒エルフ」のような中速デッキが強そうに見えてきます。それを受けて「フェアリー」を中速デッキに強い構造に作り変えます。こういった過程を経て、最後には最強デッキが完成します。ただし、そのデッキが最強なのはプレイヤー全員があなたたちと仮定を共有している場合だけです。例えば多くのプレイヤーが「フェアリー」はそれほど強くないと考えていれば、「目覚ましヒバリ」が相対的に浮上します。すると「目覚ましヒバリ」に勝てない「緑黒エルフ」は数を減らします。そうなってしまうと、中速デッキを相手に調整してきたことは無駄になってしまいます。もちろん、現実に起きることはもっと複雑です。しかし、これについては、一番強いと考えるものに備えるよりも、一番多く居そうだと思うものに備えるべきです。
まとめると、デッキのヴァージョンについては、自分が最強だと考えるヴァージョンに備えるべきで、デッキ分布については、自分の考えよりも“民衆の意見”を参考にすべきです。
#9 負けをなくせばいい時に勝ちに向かうプレイングをしてしまう
負けそうな時というのは、集中するものです。逆に勝ちそうな時は、気が緩みます。少なくとも私はそうですし、これについて話をした大半のプレイヤーもそうでした。もし勝ちそうな状況にある時には、その状況が崩れないように注意する必要があります。そのためには、何があると負けなのかを考えて、それを回避するようにプレイすることです。有利であればあるほど、回避できる余地は増えます。私の場合有利になるほどひどいプレイが増えてしまうのですが。
私たちがシンガポールでプレイテストをしていたとき、とあるプレイヤー(特に名を秘す)が白ウィニーに対して圧倒的な優位に立っていました。しかし彼は毒カウンターを9個受けていて、対戦相手は《墨蛾の生息地》をコントロールしていました。相手の手札は空で、彼はブロッカーを1体立てていました。そこで匿名プレイヤー氏は忠誠カウンターが3個乗っている《解放された者、カーン》を起動して……対戦相手にディスカードさせたのです! 対戦相手は当然《急送》をトップデッキして、ブロッカーをタップし、《墨蛾の生息地》で彼を毒殺しました。私が「当然」と書くのは、前述したとおり(訳注:#3 参照)、悪いプレイはその報いを受けるべきだからです。
匿名プレイヤー氏が理解していなかったのは、あれだけ圧倒的に場を支配していたのですから、《カーン》をなげうつことには何の問題もなかったということです。それで《生息地》を追放してしまえば、もはや負けようがない盤面でした。もちろん、負けそうな状況なら、1枚のカードから得られるリソースを最大にしなければなりません。でも、圧倒的に有利なら、確実に死ななくなるプレイングをすることです! このためには、カードからのさらなるリソースが必要か必要でないのかを判断できるようになることが大切です。以下のような状況を考えてみましょう:
あなたのライフは5点で、青マナ1個だけを立てています。手札はフェッチランド、《渦まく知識》《Force of Will》の3枚。対戦相手が《溶岩の斧》を唱えてきました。さあ、《渦まく知識》を打ちますか?
この問題文だけでは、正しい答えは存在しません。ゲームの状況によって正しい答えは変わってくるからです。もし次のターンに相手に止めを刺せるのなら、《渦まく知識》を打つ必要はありません――これ以上のカードは必要ないのですし、一方で死なないようにプレイすべきで、ギャンブルの必要はありません。もし逆に次のターンには負けてしまうという状況だったら、もちろん、なにか解決策が必要です! この場合は単純に《渦まく知識》を打って、青いカードともう一枚なにかを引き当てなければなりません。それで引けなかったとしたら、まあどのみち勝ち目は殆ど無かったということになります。
つまるところ、カードになにをしてもらうことが必要か、ということが問題になります。時には、少しだけ長く生き延びるためにカードを費やさなければならないときもあります。そんな時に能動的に勝ちに行くためにそのカードを費ってしまうと、それがゲームに負ける原因になることもあるのです。
#10 やりこみが足りない
これは負ける理由と言うよりは勝てない理由に該当します。「僕はプロツアー予選のトップ8でいつも負けてしまいます。なにがいけないんでしょう? トーナメントで優勝するためには、何が必要なんでしょうか?」――これは私がもっともよく受ける質問のひとつなのですが(ところでこの質問を私にするのはあまりいい人選とは言えません。プレミア・イヴェントで優勝するまでに、12 回のトップ8進出を要したのですから。)、私の答えはいつも大体同じです。あなたが勝てない理由はたぶん、確率的にはあなたは大抵負けることになってるからですよ。
なにしろトップ8には8人居て、勝てるのはひとりなのです。もしあなたがトップ8に4回残って一度も優勝できなかったとしても、特にあり得ない確率でもありませんし、世界一不運というわけでもありません。なにか特別に悪い点がなくても、ただ単に起こり得ることです。残り7人のうち6人まではあなたと全く同じことを思っているかも知れません。「でも僕があの中では一番強かったのに」? ええ、まあ他の6人もそう思ってることでしょうよ。それに、もし本当にあなたが最強で、あらゆる試合で勝率が 67% あったとしても、なお優勝できる可能性は 30% にも満たないのです。
これを乗り越えるには、とにかくたくさんプレイして、何度も何度も挑戦することです。もちろんプレイングを磨くことは乗り越える助けになるでしょうし、ひとつのゴールでもあるべきなのですが、それはそれとして好むと好まざるとに関わらずマジックには運が絡むのです。そして運の要素を乗り越えるためには、運が結果に与える影響を無視できるほどに、とにかくたくさんのトーナメントに出ることです。
それはまた、プレイミスを減らす最良の方法でもあります。もし大事な一戦でミスをして負けたら、なんらかの教訓を得られるでしょうし、何度も挑戦を続ければ、その教訓を活かす機会にも巡り会えるでしょう。
プロツアー予選に2回出て、2回とも運に恵まれなくても、それは不思議なことではありません。10回参加して、それで10回とも運が悪ければ、おめでとうございます、あなたは世界一不運な人です。でも、実際には世界一不運な人なんて居ませんし、もし居たとしてもそれがあなたである可能性は極めて低いです。
ああ、すっかり長くなってしまいました(訳注:ほんとだよ)。もちろん、ゲームの敗北につながることは他にもたくさんあります。たとえば睡眠不足みたいなことだって負ける原因にはなり得ます。この記事ではごく一般的なものを挙げたつもりです。お楽しみいただけたでしょうか。
パウロ・ヴィトフ(*16)
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ということでここまでです。長かったですね。
誤訳の指摘、あるいは自分ならこう訳すというような意見、などは全体的に歓迎します。コメント欄でどうぞ。特に脚注に挙げているところは意味がとりづらかったところです。ご教授頂ければ幸いです。
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脚注
(*10)それにスタックしてフェッチランドを起動しないようにする
これ文字通り訳してるんだけど意味がわかっていない。いや、理屈は理解できる(と思う)のだが、普通起動しないのではないか。
(*11)デッキに入れなければならなくなった
当時のルールではデッキリストと実際のデッキに齟齬がある場合はデッキリストに合うようにデッキのカードを入れ替えなければならなかった。現在は原則として実際のデッキに合うようにデッキリストを修正することとなっている。
(*12)たとえ大っぴらに~考慮すべき要素です。
原文は "Deep down, even if you do not consider it out loud, the prospect of winning with a deck of your own design, with cards no one else plays, s going to be a factor." くそ難しい。plays, の後は脱字があると思われるが(原文ではここの s 一文字だけが斜体になっている)ここでは is と考えて訳している。要するに、surprize factor なんぞという怪しげな factor ではなく、誰も使ってないカードが入ってるおまえのオリジナル・デッキの勝ち目がどんぐらいあると思うか心の中で考えてみろ、それこそが factor だ、と言いたいのだと思う。
(*13)ひとつ思うのは、~直結していると思います。
原文は "I think the fact that I am not attached to the decks in a meaningful way, consciously or not, has resulted in me choosing better decks for tournaments and, therefore, directly impacted my success." 大筋では特に難しいところはないのだが、in a meaningful way がさっぱりわからない。attached to the decks にかかるとは到底思えないので、その前の I think the fact that に無理矢理くっつけた。訳せないところを省くことは極力しないようにしているのだが、これは省いた方が綺麗にまとまるかも知れない。
(*14)カバレッジ
これ。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Events.aspx?x=mtgevent/pthol08/qf2
試合結果がどうなったか気になる人は読んでみよう。余談だけど coverage の発音はカヴァリッジに近いみたい。
(*15)内輪メタになっている
ここは思い切って意訳した。原文では "Your testing is inbred" だから、直訳すると「テストが近親交配になっている」になるが流石に意味が通じなさ過ぎる。というか初めて聞いた言い回しだしはっきり言って全然ぴんと来ない。一般的な言い回しなのかマジックスラングの一種なのかも不明。ちなみに競馬で言うインブリードと同じ言葉。競馬でインブリードって言う場合一般的には(以下 700 行省略)
(*16)パウロ・ヴィトフ
ポルトガル語の発音に近いらしい表記にしてみた(タイトルのところも同じ)。誰だこれって感じになる。
コメント
ただ身内メタといういい日本語がありますからそれで十分かと
勝手ながらリンクさせて頂きました!
リンクさせていただきました。